また、進行がんでは有効なのかわからないとのコメントがあったが、これは、20世紀的な発想だ。がんができるだけ小さい方が治癒率は高いので、がん検診で早く見つけ、見つかればできるだけ早く手を打ち、分子レベルでがん細胞の残存や転移・再発を診断し、再発予防に応用するのがいいに決まっている。利点をどう生かすのかが課題だ。
私はもっと大きな課題として、20-30種類のネオアンチゲンをmRNAで一気に作り出しても、それらが本当に抗原提示されるのかどうかが問題だと思っている。
当然ながら、HLAに結合力の高いものが優先的に結合され抗原として提示されるはずで、すべての抗原が等しく抗原として提示されるわけではない。また、ネオアンチゲンに反応するTリンパ球が、正常細胞を全く攻撃しないかどうかも疑問だ。アミノ酸が置き換われば、それに反応するTリンパ球はがん特異的にしか作用しないというのは大いなる誤解である。
日本はもっと集中的にこの分野に取り組むべきだ。
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2023年6月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。