2024年度のランキングから見ると、オランダが昨年に続いて世界一の年金制度を有していると評価されている。2位はアイスランド、3位デンマーク、4位はイスラエルと続く。3項目の総評価をAからDまでランキングしているが、Aランキングは先の上位4か国だけだ。日本は36位でCランキング、米国29位で最下位はインドでDランキングだ。アジアで最も高い評価を受けた国はシンガポールだ。欧州で少子化が進み、出生率が低下しているイタリアは年金制度の「持続性」(Sustainability)のスコアが低い、といった具合だ(「犬の数が人より多い社会に生きる」2016年2月24日参考)。
2024年にベトナムが加わったことで、この調査は世界人口の65%を占める48の退職所得システムを含むようになった。世界のシステムには大きな多様性があり、指数のスコアはインドの44.0からオランダの84.8まで幅がある。
マーサー社は「退職者は、インフレの再発や高金利に伴うリスクの増大にも直面している。既存の政府債務のコストが上昇し、いくつかの政府が現在のサービス水準を維持する能力が低下する可能性がある。OECD(経済協力開発機構)は『現在の財政的および経済的不確実性、ならびに生活費の上昇により、政策立案者、規制当局、監督者が年金制度を改善する改革を先送りにする可能性がある。しかし、必要な改革を遅らせることは、現在および将来の年金受給者の福祉を危険にさらすことになる』と警告を発している」と強調している。マーサー社は「貯蓄の助言を十分に得られないまま多くの人が退職している」というのだ。
ちなみに、今回12位にランクインしたスイスの年金制度について、スイス・インフォは「わが国の年金制度は依然として、資産運用の幅広い多様化と、それに伴う魅力的な長期リスク・リターン比率を持つオルタナティブ投資の活用をあまり重視していない」と指摘し、「世界中の年金制度は一般的に、人口動態とコストの上昇により大きな課題に直面している」と説明している。