前回は新しく"スペインでもっとも美しい村々"に認定された15の村についてお話しました。先日、以前から認定されていたスペイン東部アリカンテ県にある秘境の村を訪れたので、今回はそのグアダレスト村をご紹介いたします。
切り立つ岩山のてっぺんにひそむ小さな村
アリカンテといえば美しい海。夏場はヨーロッパ北部から太陽を求める観光客で賑わいますが、内陸部には険しい岩山がいくつもそびえ立ち、独特の景観を醸し出しています。
イギリス人が大好きなリゾート地ベニドルムから20kmほど内陸に足を延ばすと、切り立つような岩山のてっぺんにひっそりと身を隠すようにたたずむグアダレストの村があります。人口はおよそ200人あまりで、"スペインでもっとも美しい村々"の仲間入りをしたこともあり、毎日その何倍もの観光客が訪れます。
正直な話、人々の生活を感じるような村ではなく、観光化されています。それでも立地や景観などここにしかない魅力があり、スペインの村や小さな町が好きなら一度は訪れたいスポットなのです。
歴史地区につながる道はたったひとつ
村の歴史を紐解くと、イベリア半島がイスラム教徒に支配されていた時代からここには集落があり、岩山の上にあるお城は11世紀に建てられた要塞だったとのこと。1000年も前の昔に、こんな山間の不便な場所に人が住んでいたことにも驚きますが、要塞を築いたことにも驚かされます。
キリスト教勢力が13世紀末にこの地を取り戻した後も、17世紀初頭に追放令が出るまではモリスコ(カトリックに改宗したイスラム教徒)が主な住民だったそうです。20世紀後半に観光化が推進されたことで、忘れられたかのようにひっそり息をしていた村が活気付きます。
<この辺りが散策のスタート地点。観光化されているのがわかります>
グアダレストの歴史地区には車やバイクで入ることはできないので、村の新市街にある駐車場の辺りから散策をスタートすることになります。ここは飲食店や土産物店が並び、観光地度がかなり高いです。
ベニドルムからは、路線バス以外に日帰りツアーの観光バスが日々何台も到着するので、驚くほどリヤドロ(バレンシア生まれの陶磁器ブランド)の品揃えが豊富な土産物店があったりします。ここを抜けると、旧市街に抜けるトンネルが見えてきます。これが歴史地区に出入りする唯一の道なのです。
<歴史地区に続く道。この先にトンネルがあります>
<後ろを振り返ると、ヤシの木と深い緑で東南アジアを彷彿させる景色>
<このトンネルだけが歴史地区の出入り口>