党首討論は予想どおり不毛な議論だった。どうでもいい政治とカネの話にほとんどの時間がついやされ、60兆円を超える赤字がこれから激増する社会保障がほとんど取り上げられない。維新と国民民主だけがこの問題を取り上げたが、自民党と立民党が逃げるからだ。

後期高齢者医療の莫大な赤字をどうするのか

維新の馬場代表が医療費の3割負担に踏み込んだのはいいが、財源論で公明党の石井代表に突っ込まれていた。

石井  維新の公約で、窓口負担を現役世代と同じく原則3割と主張している。どれくらいの負担増を見込んでいるのか。

馬場 年金制度などを一本化して所得保障制度を導入し、実行したい。3割負担では、病院に行かなくても良い人には受診を控えてもらえるのではないか。適正な医療を受けられるよう実現したい。

これは答になっていない。医療費を一律3割負担にすると(受診控えの効果も含めて)約5兆円の負担増になるが、それでも後期高齢者医療費をすべて税財源化するという「医療維新」の提言の財源には足りない。

厚労省の資料

後期高齢者医療費は18.4兆円だが、税金投入は8兆円である。保険料と窓口負担は合計3兆円で、残る7兆円を赤字を現役世代からの「支援金」で埋めているが、それをやめると消費税を3%増税する必要がある。

ところが維新は「軽減税率をなくして消費税率を8%に下げる」とも公約している。この整合性はどうなっているのか。「年金制度などを一本化して所得保障制度を導入」するというのは最低保障年金のような制度を考えているようだが、これも財源にはならない。

社会保障の話をすると「世代間の対立をあおるな」というのが決まり文句だが、これは世代間対立の問題ではない。このまま赤字が拡大すると医療や介護は崩壊してしまうのだ。

現役世代から老人医療に抜かれている10兆円をどうするのか

国民民主も消費税を5%に下げると公約しているが、玉木さんも強調しているように、健康保険料が4割も老人医療に抜かれている。これをやめるには10兆円の財源が必要だ。