一般的にいえば、土木利権を握って成長したのが田中角栄とその流れを汲む、与野党の政治家であって(立憲民主党の主導権を握っているのは旧田中・竹下派の政治家である)、清和会系の利権がないわけでないが相対的には小さいものだし、まして、安倍元首相はそもそも政治資金をあまり必要としない人だったから金銭スキャンダルとは無縁だった。
今回の今村元議員の裏金も菅原元経産相の問題と同等のものとは言いがたい。しかし、それでも今村議員を狙い撃ちにした処分をして、実質的には菅原議員の復活を後押ししようという意図が丸見えの非公認に、清和会の人たちが割り切れないものをもつのは当然だろう。
菅原の辞職後の前回総選挙では、自民党は萩生田元政調会長の地元の有力者である安藤高夫が立候補したが立憲民主党の山岸一生に敗れて落選した。安藤は2017年に比例単独で当選していた。安藤は今回は東京28区から立候補する。この新設選挙区では公明党も候補擁立を希望していたので、自公対立が燃え上がることになった選挙区だ。
一方、立候補予定だった今村はもともと愛知県が本拠だが、もともと次世代の党で政界での活動を始め、日本維新の会で単独比例で当選したことがあるが、前回の総選挙では東京15区から出馬して落選(自民党が今村・柿沢未途の二人を推薦)。今回は党本部からの要請で9区からの出馬を予定していたのだから、派閥争いに翻弄された感がある。
立憲民主党の山岸一生は、元朝日新聞記者で菅直人時代の官邸の名物記者として知られ、参議院東京選挙区からいちど落選したあと前回の選挙で9区から出馬した。新聞での言論活動の延長線上で政界入りした感があって話題となった。
維新からは、自民党の稲田朋美元防衛相の政策秘書だった大河内茂太が出馬する。元宝塚市議で、皇位継承問題などでは保守派の論客として知られるが、一方で稲田が超党派で人権問題を取り上げることをサポートするなど霞ヶ関の大物秘書の一人で、維新には珍しい実力派で当選すれば重宝されるだろう。前出の木内孝胤元議員も支援している。