スーダンと接するエチオピアの国境地域は、エチオピア連邦の仕組みで言うと、アムハラ州が位置するのだが、エチオピア連邦政府とアムハラ州軍が、民族問題などに起因する対立で、事実上の内戦と言ってよい軍事的衝突を繰り返している状態にある。非常に荒れている地域だ。

エチオピアとソマリアの関係は、今年1月に劇的に悪化した。エチオピアが、ソマリア領土内の事実上の国家であるソマリランドと、港湾使用(軍港を作る予定と考えられている)の協定を結んだ。その協定に、見返りとしてエチオピアが将来ソマリランドを独立国として認めることをほぼ約する条項があったため、首都モガデシュ近辺を実効統治するソマリア連邦政府が猛然と抗議したのだ。

エチオピアとソマリランドは、その後も軍事訓練などを含めた交流を活発化させている。代わりにソマリア連邦政府実効統治地域に展開していたアフリカ連合の平和活動(現在はATMIS、来年からAUSSOMという名称のミッションに移行する予定)の中核を担っていたエチオピア軍が、ソマリアから撤収することになった。

長期にわたってソマリアにおけるアルシャバブ掃討作戦に従事してきたエチオピア軍の撤退は、現地社会に波紋を投げかけ、残留要請の運動が起こったくらいであった。しかしソマリア連邦政府は、むしろエチオピアと険悪な関係に陥って久しいエジプトに急接近し、軍事援助を引き出すとともに、エチオピアに代わるAUSSOMへの兵力提供をする約束を取り付けた。エジプトが、エチオピアに代わり、アルシャバブ掃討作戦に従事することになるのである。これは地域情勢に、様々な影響を与えていくだろう。

エリトリアは、現在のアビイ政権が成立してすぐにエチオピアと和解を果たした。そして2020年に勃発したエチオピア北部におけるティグレイ紛争では、エチオピア連邦軍とともにティグレイに展開して軍事介入を行った。その際のエリトリアの蛮行は、悪質な戦争犯罪行為として、激しく非難された。もともとエリトリアとエチオピアの国境地帯にあたるティグレイ州の勢力と、エリトリアは対立的な関係にある。