不透明な背景

 レプリコンワクチンの安全性について、医師で特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長、上昌広氏はいう。

「私は、現時点でレプリコンワクチンを法定接種の枠組みに加えることに賛成できない。それは、接種した人が周囲にうつすからなど、一部の人が指摘している理由ではない。このワクチンは、小規模とはいえども、治験にて安全性が証明されている。また、作用機序から考えても、そのような懸念はない。接種したコロナウイルスのmRNAが体内で自己複製されるため、少量のワクチン投与で効果が持続する。今後のパンデミックを見据えれば前途有望な技術だ。

 ただ、ワクチンは健康な人を対象に、何千万人にも接種するため、高いレベルの安全性が求められる。ファイザーやモデルナ製のワクチンの承認が議論された2020年ならともかく、コロナウイルスがオミクロン株となって弱毒化し、さらに大規模な使用経験があるワクチンが他にある現時点で、あえてレプリコンワクチンを使用する必要はない。明治HDは、東南アジアなどで大規模な治験を進めており、その結果が出てから承認、使用してもいいだろう。

 おそらく、今年、レプリコンワクチンを希望する国民、医師は少ない。私は、それでも明治HDは構わないと考えていると思う。それは、コロナワクチンは国が買い上げるからだ。現場で使用されようがされまいが、同社は、今後、毎年数百億円の売り上げが期待できる。在庫リスクもない。

 これは厚労省も認識していただろう。なぜ、こんなことが許されるのか。それは、厚労省が明治HDに借りを返そうとしたからだと考えられる。それは2015年に組織的不正が露見した化学及血清療法研究所(化血研)を、明治HDが最終的に引き受けたからだ。現在のKMバイオロジクスである。当時の塩崎恭久厚労大臣は厳しい処分を求めたが、A型肝炎など一部のワクチンを化血研が半ば独占販売していたため、『倒産』させるわけにはいかなった。アステラス製薬など大手国内企業に打診したが、全て断られ、最終的に熊本県庁や県内企業とともに、明治HDが事業を継承した。

 今やコロナワクチンはファイザー一強だ。まさか明治HDの子会社が、ファイザーと伍して、ワクチンを開発・販売できると考えている人はいないだろう。『国産ワクチン確保』を合言葉に、利権が生じているような気がしてならない。今回のレプリコンワクチンに対する強い拒絶反応は、このような不透明な背景が影響しているのではなかろうか」

(文=Business Journal編集部、協力=上昌広/医師、医療ガバナンス研究所理事長)

提供元・Business Journal

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