奇跡説の根強さ
チャペルの学芸員であるリチャード・リンズリーは、これらの情報の欠如は唯一の説明、すなわち神の奇跡を示唆していると考えている。
「信仰の分野からも科学の分野からも多くの人々が関心を寄せていますが、誰も本当に納得できる証拠を示してくれていません。だからこそ、私は聖ヨセフへの祈りが深く関わっていると信じることにしているのです」とリンズリーは語る。
ニューメキシコの歴史的背景
1872年、ケンタッキー州出身のカトリック修道会であるロレット修道女会が、サンタフェにある女子学校のためのチャペル建設を依頼した。設計図は著名なフランス人建築家アントワーヌ・ムーリーの息子プロジェクタスによるものだった。
5年の工期を経て、1878年にロレットチャペルは完成し、パリの有名なサント・シャペルを模したゴシック・リバイバル様式の建物として賛辞を受けた。しかし、チャペルの聖歌隊席へのアクセスが設計に含まれていないことが判明し、問題が浮上した。
修道女たちは大工チームに相談したが、解決策は見つからなかった。階段の建設は不可能だと判断されたのである。唯一の選択肢はしごを使用することだったが、修道女たちはこれを不適切で危険だとして拒否した。
奇跡の出現
他に選択肢がなかった修道女たちは、祈りに頼ることにした。9日間の連続祈祷(ノヴェナ)を行い、大工の守護聖人である聖ヨセフに助けを求めた。
伝説によると、9日目に謎の男が現れサービスを申し出たという。数か月後、階段が完成し、男は報酬を受け取ることなく姿を消した。
修道女たちは驚くべき結果を目の当たりにした。33段の美しい階段が、釘を使わず木製の楔だけで組み立てられていたのである。さらに驚くべきことに、使用された木材はニューメキシコ産ではなかった。
大工の正体をめぐる議論
今日に至るまで、誰がこの階段を建設したのかは不明のままである。専門家たちは、支えのない2回転の螺旋階段を作り上げた人物が卓越した木工技術を持っていたことを認めている。
ケンタッキー州のロレット遺産センターの記録管理専門職、レバ・ウェザーフォードによると、多くの人々が自分の親戚がその正体不明の男だったと主張する手紙を送ってきたという。
最も有力な説は、サンタフェの歴史家メアリー・J・ストロー・クックが1984年の著書で提唱したものだ。彼女は、フランソワ・ジャン「フレンチー」・ロシャスという隠遁的な牧場主がその建設者であったと主張している。
しかし、この説にも疑問の余地があり、完全に納得できる説明とはなっていない。
物理学を超越する構造
この階段の設計は、当時としては非常に革新的なものだった。基本的な手工具のみを使用し、電気を使わずに建設されたことを考えると、さらに驚異的である。
学芸員のリンズリーは、多くの建築家がこの階段の耐久性を説明できないと語っている。「会ったことのある全ての大工が驚嘆していました」とリンズリーは言う。
謎の木材
専門家たちは、階段がトウヒ材で作られていると特定したが、その木材の出所は不明のままである。地元の製材所から調達されたものでないことは確かである。
1996年、元米国森林局の林業技術者であるフォレスト・N・イーズリーが15ヶ月にわたって階段を調査した。彼は世界中にこれと全く同じトウヒは存在しないと結論づけ、この木材を「ロレット・トウヒ」と名付けることを提案した。
ロレットチャペルの遺産
現在、ロレットチャペルは私有の博物館として機能しており、カトリックの巡礼者から学校のグループまで、様々な人々が訪れている。また、人気のある結婚式場としても利用されている。
30年以上学芸員を務めるリチャード・リンズリーは、ロレットチャペルの階段が奇跡以外の何ものでもないという彼の考えを変えようとする人を今でも歓迎している。「私はいつも意見を求められますが、これが奇跡だと信じざるを得ません」と彼は語る。
ロレットチャペルの螺旋階段は、信仰と科学の境界線上に立つ不思議な存在である。その謎めいた起源と驚異的な構造は、私たちに知識の限界と信仰の力を考えさせる。この「奇跡の螺旋階段」は、人間の創造性と神秘の証として、これからも多くの人々を魅了し続けるだろう。
文=青山蒼
提供元・TOCANA
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