しかしイスラエルは、1982年に再びレバノン南部に侵攻し、段階的に撤収したものの、駐留し続けた。UNIFILは、イスラエル軍展開地域から撤収せざるを得ず、後背地から人道援助を行うことになった。この期間にも、イスラエルの砲撃によってレバノン市民が多数犠牲になり、UNIFIL要員も死傷者を出す事件などが起こった。イスラエルの最終的な撤退は、2000年になってからのことであった。

しかしレバノン南部で台頭したヒズボラがイスラエル領内に攻撃を加えるようになり、2006年にイスラエルは、大規模な攻撃とともに、再びレバノンに侵攻した。この時のイスラエルの2006年内の撤退を可能にするため、UNIFILの強化が図られて、治安維持にあたるレバノン政府への支援をより積極的に行うことが求められた。

国連安全保障理事会常任理事国の一つであるフランスは、歴史的にレバノンと深いつながりがある。その事情も反映して、イタリアやスペインといった南欧諸国が、UNIFILに相当数の兵員を派遣してきている。

だが現在のUNIFILの最大要員提供国は、インドネシアだ。全体の1割以上を占める1,231人の要員を派遣している。次がイタリアの1,068人で、欧州グループの中東への貢献の代表のようになっている。それに、903人のインドが続き、そして833人のマレーシアが続く。

中東から離れており、歴史的にも深い結びつきがあるとまでは言えない東南アジアのイスラム圏の有力国であるインドネシアとマレーシアの二カ国だけで、全体の2割以上の要員を提供して、UNIFILを支えているわけである。なお南アジアのイスラム圏有力国であるバングラデシュは、UNIFILでは120人の要員派遣で、国連PKO全体で5,724人で世界第3位である。

インドネシア、マレーシア、バングラデシュのUNIFILへの大きな貢献は、私が、ガザ危機の未来も、アジアのイスラム圏の諸国を招き入れる仕組みで切り開いていくのが望ましい、と主張し続けている理由でもある。