「駅や電車、バスなどの公共交通機関の無料Wi-Fiサービスを使う機会がすっかり減った」という方も中にはいるのでは?
かつて公共交通機関などの無料Wi-Fiサービスは、パケット通信の使い放題プランに手が届かない方や、3G回線の接続の遅さに悩まされていた方にとっては貴重な通信インフラでした。加えて訪日観光客の方などから、通信インフラとして活用される機会が少なからずありました。ではなぜ無料Wi-Fiの終了が相次いでいるのでしょうか。
相次ぐ「無料Wi-Fi」の終了
外出先でも気軽にアクセスできた公共機関のフリーWi-Fiですが、コロナ禍やアフターコロナにおいて終了が相次いでいます。
たとえば、東京メトロは2022年6月30日に車両内で提供していた「Metro_Free_Wi-Fi」を終了しました。都営バスも2021年11月に車内で利用できた「Toei Bus Free Wi-Fi」のサービスを終了しています。さらに、東武鉄道でも2022年9月30日をもって一部の車両で提供していた「TOBU FREE Wi-Fi」のサービスを終了しています。
また2024年には小田急電鉄が、小田急ロマンスカーで提供する「odakyu Free Wi-Fi」の終了も発表。続々と交通機関でのWi-Fiサービスの廃止が進んでいるといっても、過言ではないでしょう。
駅や電車、バスの無料Wi-Fiの終了が続いている理由は?
公共機関のフリーWi-Fi終了が相次いでいる理由には「5Gの普及」や「東京五輪でのインバウンド客による需要増加を見越し、通信インフラを整備していた事業者がそもそも多かった」ことなどが挙げられます。
都市圏における5Gの普及
先にご紹介した公共交通機関の無料Wi-Fiの廃止に関しては、小田急電鉄や東京メトロなど首都圏の事業者による廃止が目立つことが特徴的です。首都圏では4Gよりも極めて高速な「5G通信」の普及が進んでおり、3G回線などが利用されていた時代に比べて相対的に無料Wi-Fiの魅力が薄れてきている側面はあるでしょう。
この記事をお読みの方の中にも、5Gが全国的に普及したうえで「モバイル通信の使い放題」サービスに加入すれば、自宅の固定回線は不要では無いか?と考えている方もいるのでは。
無料Wi-Fiの魅力が相対的に薄れるくらい、モバイル通信が「一般的な用途では十分」な速度となり、使い放題プランや大容量プランも充実している状態となったと言えるでしょう。
東京五輪におけるインバウンド向けのインフラ整備の役割を終えた
そもそも公共交通機関における無料Wi-Fiサービスは、東京オリンピック・パラリンピック2020を見据え、「インバウンド向けの通信インフラ整備」を目的にサービスが拡大されてきた側面があります。
たとえば2014年時点では全国のWi-Fiスポットは約4万カ所であったとのが、五輪向けのインフラ整備が各地で進んでいた2018年時点では約14万カ所まで拡大していました。しかし、実際には東京五輪は新型コロナの影響で2021年に開催延期されたうえ、無観客などの措置がとられました。
2024年現在でも、インバウンド向けに整備された無料Wi-Fiは円安を背景とした訪日観光客の増加に伴って各地で活躍しているケースもあります。とはいえ五輪が無観客開催となり、新型コロナの影響で思うようなインバウンド需要も得られなかった自治体や交通機関では「無料Wi-Fiはすでに役割を終えた通信インフラであり、もう不要である」と判断を下すケースもあるでしょう。
「提供事業者との契約終了」
無料Wi-Fiを提供していた駅や電車、バスなど交通機関の事業者は「提供事業者との契約終了」を、サービス提供の公式な理由としているケースが多く見受けられます。つまり、2021年の東京五輪終了後、契約期間を更新しないことを社内で決定したうえで、残っていた契約期間を消化してサービス終了している事業者が一定数あると言えるでしょう。
実際、東京メトロの「Metro_Free_Wi-Fi」も、訪日外国人数の増加や東京オリンピック・パラリンピックの開催を受けた施策でしたが、コロナ禍による訪日外国人の減少などを踏まえ、提供事業者との契約更新を見送ったとされています。