社会課題が複雑化する中で、専門分野を超えた学際的研究が注目されているが、異なる学問と連携する前に「分科」レベルでの連携強化、すなわち「隣の研究室」を理解することが重要ではないか。

  1. 分科レベル連携強化を目指すための「総合〇〇学」の必要性

    学問の専門化、細分化が進んだ現代だからこそ専門性を武器として、幅広い視点からその分野(「分科」レベル)を総括できる高度な能力を有する人材が必要と考えている。イメージとしては、医学における総合診療学のような学問、総合診療医のような人材である。

    従来、医学では消化器や耳鼻咽喉等特定の部位に特化した専門医が患者を診察していた。人口の多い都市部では患者が専門医を選んで診察することができるが、過疎地域等では1人の医者が様々な症状に対処する必要があるため、身体の不調全般を診療できる総合診療医の需要が高まっている。

    社会実装が急務な専門分野においては総合学の視点は不可欠であり、専門分野と一般の人との接点という意味でも窓口としての総合学の役割は大きいといえる。

    図1に総合学のイメージを示す。リベラルアーツのような分野をまたがる「広く浅く」と細目名やキーワードレベルでの「狭く深く」の専門との中間(図のオレンジの領域)が本レポートで定義する総合学の領域である。

    図1 総合学のイメージ

    工学系でいえば実務において「電気技術者」や「土木技術者」と括られており、大学教育においても電気分野や土木分野について一通り学ぶことになる。研究や実務ではさらに細分化された領域を追究することになるが、その一歩前である電気分野全体や土木分野全体を総合的かつ専門的に扱える人材を増やすことがこれからの学問において重要ではないか。

    現状、空白地帯であるからこそ「広く浅く」と「狭く深く」の中間である総合〇〇学を強化することが、分科レベルの連携や分野・分科・細目・キーワードの学問の上下のベアリングとなることを期待している。

  2. 専門分野の探求は分野横断型の基礎である