統合失調症の患者は、幻聴で苦しむことが少なくありません。
そのような幻聴には、「お前には生きている価値がない」「死ね」などと自分を否定する声が含まれます。
また、「今、○○の建物に入った」「交差点を歩いている」などと、誰かが自分を監視しているかのような声が聞こえてくることもあります。
では、なぜ統合失調症患者では、このような幻聴が生じるのでしょうか。
最近、中国にあるニューヨーク大学 上海校(NYU Shanghai)に所属するシン・ティエン氏ら研究チームは、統合失調症患者の幻聴が、脳の「自分の声だと判断する機能」が適切に働いていないことから生じていると報告しました。
この機能の不具合により、患者たちは「脳内の思考」を自分のものだと認識しづらく、それがまるで外部から聞こえてきたかのように感じてしまうのです。
研究の詳細は、2024年10月3日付の学術誌『PLOS Biology』に掲載されました。
目次
- 存在しない声が聞こえる幻聴
- 幻聴は「脳内の思考」を「外部の声」と区別できないことから生じる
存在しない声が聞こえる幻聴
統合失調症の主な症状には、「話題が頻繁に変わる」「作業ミスが増える」「感情の動きが少なくなる」などの生活・社会面での障害に加え、幻聴や幻視、妄想があります。
特に「幻聴」で苦しむ人は多く、患者本人にはまるで現実に聞こえたように感じられるため、病気が原因だとなかなか気づくことができません。
では、どうして統合失調症患者では幻聴が生じるのでしょうか。
ティエン氏ら研究チームによると、患者たちの幻聴は、彼らの脳が「自分の考え」と「外から聞こえてくる声」を区別できないことによって生じているという。
そして、その原因は、「言葉を発する時に働くいくつかの機能」が関係しています。
その機能とは、「遠心性コピー(efference copy)」や「随伴発射(corollary discharge)」です。