この曲線では、低線量のある範囲(濃くなっている領域)で生物にとって活性化を促す有益な領域が存在するということを示しています。

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各ストレスの生体防御機能への影響/ Credit : 山岡聖典, 学術の動向(2011)

生物は現在より自然放射線が高い太古の環境下で発生しており、放射線に限らず多様な物理的、化学的ストレスのある状態の中で進化してきました。

例えば、外部からの放射線によって生じる活性酸素や、生体内で作られる桁違いに多い活性酸素によってDNAの損傷が起こりますが、低線量の放射線は、細胞内の分子やイオンの運動を活性化させて、修復に関わる生化学的な反応を加速させると言われています。

これらの細胞の機能が、抗酸化物質による活性酸素の除去正確なDNAの修復の促進を行っていると考えられています。

一方で、全く放射線が無い環境では、細胞がストレス応答やDNA修復に関する基礎的なトレーニング機能を失い、結果的に長期的な適応能力が低下する可能性があるとされています。

人間の筋力と同じで細胞も使わない機能は衰えていくようです。

低線量の自然放射線が生物に対してある種のトレーニング効果をもたらし、細胞の機能に有効に働いていると考えられています。

ホルミシスは、低線量の領域で生体の活性化を促すという、生物が進化の過程で獲得してきた重要な生体の防御システムであり、細胞増殖の促進、免疫機能の強化、成長の促進等に多様な効果を示しているのです。

低線量放射線に関する最新動向

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DNA損傷修復のメカニズム / Credit : 高橋克彦(獨協医大)- 低線量率放射線の影響について(2020)

ICRP(国際放射線防護委員会)では、低線量の放射線がヒトの健康に与える影響を推定する場合、「放射線による影響は、線量がいくら低くても生物学的には有害で、その有害な効果が線量と共に増加する」、と仮定したLNTモデルを採用し、各国に勧告しています。