潜水行動の目的はおそらく、天敵から身を隠すためだと推測されました。

コスタリカの熱帯雨林には大小さまざまな生物が暮らしており、その中でもアノールトカゲは非常にか弱い存在です。

特に足が速いわけでもないので、陸上で鳥やヘビに見つかってしまえば、ほとんど逃げ切ることはできません。

そうした中で、水中にしばらく身を隠す生存戦略を編み出したのでしょう。

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Credit: Lindsey Swierk, eurekalert(2024)

しかし一方で、スウィアーク氏は「アノールトカゲの潜水において、このエアポケットが本当に呼吸のための機能的な役割を果たしているのかどうかは検証されていませんでした」と話します。

もしかしたら鼻先のエアポケットはトカゲの皮膚の特性により生じる副次的なもので、実際にはエアポケットがなくても、アノールトカゲは数十分間の潜水が十分に可能かもしれないのです。

そこでスウィアーク氏ら研究チームは、エアポケットがある場合とない場合でアノールトカゲの潜水時間に違いが現れるのかを検証しました。

エアポケットは潜水時間を伸ばしていた!

チームはアノールトカゲのエアポケットが機能的な役割を果たしているのか、それとも単なる副産物なのかを調べるため、実験を行いました。

ここではアノールトカゲを捕獲して2つのグループに分け、一方のグループにのみ、皮膚表面に気泡が形成されるのを防ぐ物質を塗布します。

アノールトカゲの皮膚は水を弾く疎水性です。

そのおかげで水中に入ると皮膚に空気がピッタリと密着して、気泡が形成されるようになっています。

そこでアノールトカゲの皮膚に疎水性をなくす物質を塗ることで、水中に入ると普通に水に濡れてしまい、気泡が作れなくなります。

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Credit: Lindsey Swierk, eurekalert(2019)

そして両グループの潜水時間を比較した結果、「気泡を作れるトカゲ群」は「気泡を作れなくなったトカゲ群」に比べて、32%も長く水中に留まれることが判明したのです。