法律外の問題が混同されている

兵庫県斎藤知事への怪文書と局長懲戒処分事案

兵庫県斎藤元彦知事が怪文書を配布した県民局長を懲戒処分にした事案に関して、公益通報者保護法(と兵庫県独自の制度)の観点から問題点が指摘されていますが、この観点では公益通報に当たらないので問題は無いという視点が無視された言説がマスメディアを中心に席巻しています。

が、法的な問題とは別次元の問題から斎藤知事の知事としての適格性が疑問視されている要素があり、それが前提にあるから法的な問題も発生しているものとして主張されている、という面があります。

公益通報者保護法以外の問題次元:組織運営論と政治論

首長の権力行使の在り方として適切だったか? ⇒現行法上の問題はないとしても、手続の在り方として疑念を生まないものだったか? 首長の情報発信として適切だったか? ⇒記者会見での元局長に関する発言内容、懲戒処分に至るまでの経緯説明の仕方など。反対派も居る有権者からどう見えるか?という視点 政治的な動きとして適切だったか? ⇒議会と対立している中での全ての判断

公益通報者保護法とは別次元の問題として、組織運営論と政治論が語られている場合があります。本件に関して言及する各者の発言をよくよく見ていると、この観点からの指摘をしている場合があるということに気づきます。

例えば元大阪維新の会の法律顧問であった橋下徹氏は以下論じています。

知事、市長時代、組織内から僕への怪文書・誹謗中傷は山のようにありました。 差別的なものも含めて酷かった。 それに比べれば今回の斎藤さんへの告発なんてたいしたもんじゃありません。 あんなの職員からの普通の文句、苦言レベルでしょう。 僕の場合全て第三者・第三者的な調査を徹底的に行い、僕に関する疑惑・告発について事実確認と評価を粛々と進めました。 結果は全てシロとなりましたが、告発した特定の職員を嘘八百だとか公務員失格だとか言ったことは一度もありません。 第三者(的)調査で告発は根拠なしとなってもですよ。 当たり前です。 知事・市長が告発した職員を嘘八百と公で罵れば、調査後シロとなったとしても、それ以後内部告発は萎縮するからです。 今回の斎藤さんは第三者調査前に、告発した特定の職員を公で嘘八百と罵ったのです。 この事の重大性を与党として権力を扱った経験のない維新国会議員団は認識できていない。 もちろん僕へのあまりにも酷い誹謗中傷に対しては、組織として注意・人事異動くらいはしたと思いますが、懲戒にしたという報告は聞いていません。 人事異動についても超例外で、複数人まとめて一回くらいの記憶です。 あとはお咎めなしです。 斎藤さんへの告発も大阪であれば調査してシロで終わり。 せいぜい注意くらいか。 これが政治団体に合流して政治運動としてやっていたなら大阪でも法違反・条例違反として処分もあったかもしれませんが、今回は政治運動ではないですから。 知事就任直後の朝礼であの「れいわ」の大石氏が当時職員として僕に反対演説をしましたが( TVでガンガン流れ、今でも反橋下・親大石のみなさんを鼓舞し大石氏の選挙を助ける映像になっているようですが)、調査の結果大石氏の主張に根拠なし(大石氏は僕が職員を分断しているとか、残業させているとか言っていましたが、大石氏は直後のTVインタビューで自分は残業をしていないと告白)となりましたが、当然注意もしていません。 あのとき幹部たちが「大石氏に何かしらの処分が必要では」と僕に忖度した議論をやろうとしましたが、僕が止めました。 その後大石氏は普通に大阪府の職員として勤めています。 このように職員からの怪文書・誹謗中傷について絶対やってはいけないことは、この怪文書・誹謗中傷について発信した職員を公で罵ることです。 これをやってしまえば組織は終わります。 人事権の対象ではない議員やコメンテーターに対しては罵ればいい。 今回は権力行使のあり方について、特に権力を使うことを重視する維新だからこそ、絶対にやってはいけないラインとして認識しなければならない問題なのです。