このミイラはアビイスキー地区で見つかったことから「アビイスキーサイ(Abyysky rhinoceros)」とのニックネームを付けられました。
ミイラが発掘されただけも十分な驚きでしたが、真に驚嘆すべきはその保存状態の良さでした。
永久凍土(※)の中で保存されていたおかげで軟部組織が腐敗することなく、体の右半身がほぼ完全な状態で残されていたのです。
(※ 永久凍土は最低2年以上にわたり継続して温度0℃以下を保っている土壌と定義される)
頭部や胴体、足の形状がきれいに保存されており、分厚い皮膚や筋組織、体毛、内臓の一部までもが残されていました。
右半身だけを見れば、全体が完全に保存されているようにしか見えません。
左半身はおそらく、この個体が亡くなった後に何らかの動物によって食べられたせいで大部分を失ったと見られています。
また生殖器の部分も食べられていたため、アビイスキーサイがオスかメスかは特定できていません。
しかし軟部組織の多くが残っていたおかげで、化石だけではわからないケブカサイの秘密が明らかになりました。
背中にコブ⁈ 新しい体のメカニズムを発見
ミイラの調査により最初に明らかになったのは、ケブカサイの毛皮が成長につれてどのように変化するかでした。
ケブカサイは寒冷な環境に住んでいたので、基本的に皮膚は分厚く、体毛の密度も濃かったことが知られています。
しかし研究チームは今回、アビイスキーサイと過去に見つかっているミイラを合わせて、ケブカサイの毛皮が成長につれて硬く、分厚くなっていく証拠を見つけたのです。
これまでの調査では、2015年に生後12〜18カ月ほどのケブカサイのミイラが、2007年には20歳ほどで死んだケブカサイの成体のミイラが見つかっています。