環境省も、いったん決めた環境基準を緩和すると、マスコミの批判を浴びるのでやらない。放射能と同じである。PCBは最終処分できないまま大量に貯蔵され、膨大なコストをかけて(無害な)変圧器などの交換が行われた。

PCB騒動からダイオキシン騒動へ

そして原因がダイオキシンだということがわかると、今度はダイオキシン騒動が起こった。ベトナム戦争の枯葉作戦で散布されたダイオキシンでシャム双生児が産まれたという(医学的根拠のない)説が流布され、全国でダイオキシンを駆逐する騒動が始まった。

ゴミ焼却炉にダイオキシンが残留しているという調査結果が出て、1兆円以上のコストをかけて全国の焼却炉が改築された。だがゴミ焼却炉から出るダイオキシンはほとんど無視できるレベルであり、環境中のダイオキシンによる健康リスクは平均余命1.3日。排出を規制する必要はない。

初期の公害問題では、有毒物質が致死量を大きく上回るケースもあった。水俣病の原因がまだ不明だった1959年にNHKの放送したドキュメンタリー「奇病のかげに」は、その奇病の原因が魚に含まれる有機水銀ではないかと指摘し、公害問題を行政が取り上げるきっかけになった。

民放は最初(スポンサーとの関係で)公害問題をまったく取り上げなかったので、NHKの果たした役割は大きいが、その過剰報道の弊害も大きい。福島の放射能も、何十兆円もかけて除去する価値はない。 そういう費用対効果を冷静に論じることも、NHKしかできないのではないか。