PCB(ポリ塩化ビフェニール)をめぐって関西電力送配電の高市副社長が辞任した。問題はPCBの含まれる変圧器が残っていることを知りながら、国や大阪府に虚偽報告したコンプライアンス違反で、これ自体はよくないが、PCBにはほとんど害はない(2019年9月21日の池田信夫blogの記事の再掲)。

「カネミ油症の原因はPCB」という報道は誤報だった

福島で騒がれたトリチウムは、普通の水にも含まれている、ほぼ無害といってよい物質だが、こういう物質がいったん有毒物質とされると、それが科学的には無害とわかっても、莫大なコストをかけて処理しなければならない。

私が取材する側として経験したのが、PCB(ポリ塩化ビフェニール)である。これは1万4000人が食中毒になったカネミ油症の原因とされたが、瀬戸内海の魚からPCBが検出されたことをNHKがスクープし、全国で魚が売れなくなるパニックが発生した。PCBの製造・輸入は禁止され、それを使った変圧器などはすべて廃棄された。

変圧器に含まれるPCB

しかしその後の調査で、食中毒の原因は熱媒体として使われていたPCBではなく、それが加熱されてできたダイオキシンであることがわかった。中西準子氏の研究でも、ライスオイル中毒の原因はPCBではなくダイオキシンだったと結論している。

これはNHKも早くから気づいていた。私がPCB問題を取材した1980年代から「原因はダイオキシンだ」という研究発表が出ていたが、NHKは無視した。それを認めると、大スクープが誤報ということになってしまうからだ。