ヤマハもその気になる

「金脈みっけ!」と、ほくそ笑んだヤマハは、2000年にTWのマイナーチェンジを行います。弁当箱のように四角いヘッドライトが丸型に、野暮ったいリアタイヤもオンロードタイプに変更されるなど、田舎から都会に出てきた若者のようにスタイリッシュになっていきます。

2002年には1987年の登場以来15年目にして初のモデルチェンジを実施! セローのエンジンを流用して排気量を225ccにアップ(最高出力16ps→18ps)。太田裕美さんの忠告に耳を貸すことなく、「都会の絵の具」に染まっていくのでした。

縄張り争いにホンダも参戦

そんなTWの変化を、忌々しそうに眺めていたのが「ホンダ・FTR250」でした。誕生は1986年で、TW200の1年先輩にあたります。FTRとは「フラットトラックレーサー」の略で、競技モデルをイメージしたマシンは走りもスポーティそのものでした。

弁当箱型ヘッドライトや、マフラー近くまで伸びたサイドカバー(通称・ふんどし)など、若者のココロを掴めない見た目ですが、ワイドなハンドルや低重心など乗りやすさは抜群で、ビギナーからエキスパートまで楽しめる一台でした。

そこには負けられない戦いがあった

しかし「俺の良さをわかる奴だけに乗ってほしい」という孤高な態度が仇となり、1989年に販売終了。「そのまま忘れ去られるだろう」という予想を裏切って、2000年9月に「FTR223」として再デビューを果たしました。見た目こそ先代のFTRに似てはいますが、エンジンやフレームなど全くの別物でした。

目的はズバリ、TWの牙城を崩すこと。オフロード走行ではなく、カスタムベースになることを前提に開発。パワーユニットに、1973年発売の「バイアルスTL125」と同系列のエンジンを採用するなど、TWよりも低価格を目指しました。

抗争激化。そして誰もいなくなった

ヤマハとホンダのおこぼれにあずかろうと、スズキは「グラストラッカー(写真)」、カワサキは「250TR」を発売。これがブームのピークでした。似たようなバイクが街にあふれたことで、「流行りものに乗っかっている感」が強くなります。

流行はとかく過激な方向に進化していきがちです。TWのスカチューンカスタムもご多分に漏れず、見た目重視のロングスイングアームが登場。オスのヘラジカがツノの大きさで優劣を争うように、その長さを競うようになります。武器としての機能を失ってしまったツノをもつヘラジカが絶滅危惧種になっていったように、機能性や使い勝手を無視した過激化したカスタムによって、TWのスカチューンは終焉へ……。



いつしか潮が引くようにTW人気は去っていったのでした。