◆鏡を見つめる
ムーディ博士のサイコマンテウムは小さな暗い部屋で椅子に座り、目の前の鏡を見つめるという方法であった。
ウォークインクローゼットよりも狭いその部屋の壁には、高さ1.2メートル、幅1メートルの鏡が取り付けられている。ミラーの下端は床から90センチほど上にあるという。
部屋の中央には座り心地のよい頭まで支える背もたれがついた低い脚の椅子が置かれている。この椅子に座って鏡を見ると、正面がちょうど鏡の下端部分になる。
小部屋の壁は黒いベルベットの暗幕で覆われているため、鏡を見ても黒一色の世界が広がっているだけである。椅子のすぐ後ろには、15ワット電球の小さなステンドグラスのランプが置かれていて、部屋をほんのり照らす唯一の光源となっている。
そしてムーディ博士はこの部屋で何度も死者とのコンタクトを試みたのである。自身で行うこともあれば、希望者に行わせることもあった。