日本では引退後、種牡馬または繁殖牝馬にならない馬の多くは乗用馬として乗馬クラブなどで活躍しています。
しかし、人間同様、競走馬の再就職もそう簡単ではありません。
農林水産省が2024年6月に発行した「馬産地をめぐる情勢」によると、2022年末の在籍登録頭数21,458頭のうち、約半数の11,024頭が2023年に競走馬登録を抹消しています。
登録抹消した主な理由は、一度登録抹消して中央競馬と地方競馬間で移籍し再び競走馬登録する再登録馬3,961頭、乗用馬3,257頭、繁殖馬1,281頭でした。
それ以外には、馬のワクチン開発といった研究に用いられる研究馬、競走中や調教中などに死亡したへい死、所在がはっきり分からない馬もいるというのが現状です。
この登録抹消頭数には再登録馬も含まれてはいるものの、乗用馬として再就職できる馬は約30%と割合が高いとはいえません。
一体なぜなのでしょうか?
再就職のために必要な訓練
競走馬はレースで勝つため、一般的な乗用馬とは異なる調教により、他馬より速く走るための闘争心や全力疾走することを教えられます。
ところが、乗用馬として重要なのは、乗っている人間が求めるペースとバランスを保ちながら運動することです。
再就職先によっては、競走馬時代のように経験豊富な乗り手ばかりではなく、経験の浅い人間も安全に背中に乗せなければなりません。
つまり、乗用馬になるためには競走馬時代に学んだことをリセットしなければならないのです。
このリセットの過程はリトレーニングと呼ばれ、馬にとっても人にとっても難しく、時間がかかります。
馬の性格と気質によって学習能力や人間に危険が及ぶような行動の傾向などが異なるため、リトレーニングの効率改善と事故頻度の低減には馬の性格と気質を考慮することが不可欠と考えられています。