自由党と国民党はその政治信条は似ている。特に、移民政策では国民党はここにきて自由党のそれに負けないほど強硬政策を主張し、国境の監視強化、不法移民・難民の強制送還など実施してきた。ただ、対欧州連合(EU)や安保政策では自由党は国民党とは異なり、EUに対して批判的である一方、ロシアに対しては融和的な姿勢が目立つ。対ウクライナ支援でも消極的だ。

自由党のキッケル党首は8月21日、ウィーンのブルクガルテンのパルメンハウスで同党の選挙プログラムを発表した。そのタイトルは「オーストリア要塞」(Die Festung Osterreich)だ。キックル党首は「オーストリア要塞は自由の要塞である」と言明している。

自由党は、移民排斥、ナショナリズム、欧州連合(EU)やグローバリズムに対して強い懐疑心を抱き、イスラムフォビアだ。その一方、厳格な伝統的家族観を支持し、ジェンダー主義に警告を発している。キックル党首は「自由党は個性、主権、均質性、そして連帯を重視する」と述べ、パンデミック時の基本的権利や自由の制限について批判している(「極右『自由党』は何を考えているのか」2024年9月1日参考)。

今回の選挙戦で興味深い点は、「緑の党」の低迷だ。オーストリアでは今月上旬、大洪水に見舞われ、多くの家屋が水浸しとなるなど、気候不順でさまざまな被害が出たばかりだ。「緑の党」が「ほら見たことか」と言って、環境保護政策の重要性を国民に訴えるチャンスだったが、同党への支持率をみる限りでは、全く反対の結果になっている。ドイツの「緑の党」でも同じ傾向が見られる。多くの国民が「緑の党」離れを見せてきているのだ。

「緑の党」と好対照なのは、ネハンマー首相の国民党だ。同首相は洪水被害地を視察し、緊急被害対策に積極的に乗りだしている。その危機管理への対応に対し、国民の信頼と好感度が上がっているのだろう。国民党の支持率アップとなって表れてきているのだ。自由党と国民党のトップ争いが面白くなってきた。