YaroslavKryuchka/iStock

歴史を紐解けば、国際情勢の真相や、今後の行方が見えてくることが多々あります。世界で最も多大な影響力を与える政治家は、間違いなくアメリカ合衆国の大統領です。アメリカ大統領選挙の歴史を知ることで、世界の動向を知ることができるのです。

「教養としてのアメリカ大統領選挙」(神野正史 著)秀和システム

[本書の評価]★★★(80点)

【評価のレべリング】※ 標準点(合格点)を60点に設定。
★★★★★「レベル5!家宝として置いておきたい本」90点~100点
★★★★ 「レベル4!期待を大きく上回った本」80点~90点未満
★★★  「レベル3!期待を裏切らない本」70点~80点未満
★★   「レベル2!読んでも損は無い本」60点~70点未満
★    「レベル1!評価が難しい本」50点~60点未満

まずは中国に目を付けたアメリカ

神野さんはアメリカの〝正論〞の裏に潜む本音を理解しなければいけないと言います。

「フィリピンを押さえたアメリカは橋頭堡(前線基地)としてその先に〝照準〞を定めます。それが当時の中国『清朝』でした。しかし、このころの清朝はすでに英仏独露日が、それぞれ租借地や勢力範囲を設定して中国分割がほぼ完了しており、アメリカが付け入る隙がありません」(神野さん)

「そこでマッキンレー大統領は、時の国務長官Jジョン・ヘイの名で英仏独露日の各国に通牒(ノート)を送り付けます。それがかの有名な『門戸開放宣言』です。具体的には以下の3つを伝えます。

門戸開放(中国における商業活動はすべての国に開放されるべきである) 機会均等(機会はすべての国に差別なく平等に与えられなければならない) 領土保全(清朝の領土は中国人のものであり、これを奪ってはならない)

ひとつひとつが正鵠を射た、文句の付けようのない〝正論〞が並びます」(同)

日本人は総じて〝お人好し〞なので、こうした〝正論〞をいちいち言葉通り受け取ってしまいますが、神野さんは本音を理解すべきと指摘します。