こうした背景を踏まえてチームは今回、「女性の声の高さが本当に男性のリスク行動を誘発させるのか」を実験で検証することにしました。
これには第一に、進化生物学的に男性には女性の声の高さによってリスク行動を取りやすくなる性質が備わっているのかどうかを調べる目的があります。
さらにチームはもう一つ、社会文化的な要因の影響も調べることにしました。
私たち人間は本能で動く野生動物とは違い、社会文化に根ざした道徳規範や習慣によって自らの選択を柔軟に変えています。
例えば、ある文化圏で「女性が男性のリスク行動を嫌う」背景があるとするなら、男性は女性の高い声にさらされても、リスク行動を取らない可能性が考えられるのです。
チームはこれら進化生物学的な要因と、社会文化的な要因の2つを検証することにしました。
「女性の声の高さがリスクを促すのか」VRで実験!
最初の実験では66名の健康な男性(平均年齢22歳)を参加者として募りました。
彼らには女性の声でナビゲートされるVR(仮想空間)の運転シミュレーションに取り組んでもらいます。
男性は2つのグループに分けられ、一方は女性ナビゲーターの声を低いロートーンに、もう一方は声を高いハイトーンに設定しました。
この条件のもと「ストップライト課題」というタスクを行います。
このタスクは運転する車が交差点に近づくと自動的に信号が黄色に変わるようにデザインされており、男性は黄色信号をそのまま直進するか止まるかを選択しなければなりません。
ここで男性が黄色信号を直進した回数がリスク行動の指標となりました。
2つ目の実験では120名の健康な男性(平均年齢21歳)を対象に、リスク行動における社会文化的な要因の影響を調べています。