この世界はすべからく強固な物理法則に守られている思われて来た。ところがそんな世界が揺らぐような出来事が2010年代に起きた。
■マンデラ効果の誕生
それは、南アフリカのネルソン・マンデラが「拘留中に、獄中で亡くなった」という記憶をもつ女性の出現から始まった。彼女は「少なくとも地球全体では数千人がこの記憶を持っているはず」と主張したが、実際にはマンデラは釈放後、大統領選に出馬し1994〜99年まで大統領を務めた後、2013年に亡くなっている。彼女の記憶は間違っていたのだが、たしかに彼女と同じ記憶をもつ人が多数存在したため、こうした出来事を「マンデラ効果」と呼ぶようになったのだ。
世間では「偽記憶」などとと称されるが、「存命中の人の死亡記事を見た」といった記憶改竄がどのように行われているのかは解明されていない。
ネットで有名人の死亡に関するフェイクニュースが度々掲載されたことが原因かもしれないし、掲示板に書かれた死亡疑惑が真実として広まってしまうことが原因かもしれない。また、芸能人をメディアなどで見かけなくなった場合も「死亡したのでは?」と囁かれやすくなることから、死亡したという記憶が刷り込まれやすい。
ところが、人によっては以前放送されていたアニメの事をハッキリと覚えていて、そのストーリーまで語れるのに、他の人の記憶には残っていない事例がある。
偽の記憶が生まれる理由はいくつか挙げられるが、質問の仕方によって誤誘導されるという思考実験には一定の説得力がある。前述のマンデラ氏の死亡記事に対して「見たことがあるか」と聞けば、一定数の人々は「ある」と答えるだろう。この時点で、ある回答を得たいが為に誘導尋問しているようなもので、記憶になくても「あったようが気がする」程度の回答は得られる。
ところが、この世界には「物的証拠が残っている記憶違いも」いくつか報告されているのだ。