インボイス制度の導入で厳しい選択を迫られる
事業を続けていくうえでのランニングコストがかかる職種となると、リスクも増大し所得も減りやすい。
「個人事業主は、会社員に比べて売上が不安定になりやすいため、月々のランニングコストの負担が大きい職種だと、売上は多いのに手取り額が少ないという状況に陥りやすい。たとえば、運送業ならトラックの管理費、ガソリン費だったり、飲食店経営であれば店舗の賃料、材料費だったりと毎月とにかくコストがかかりがち。そのため一定以上の売上が見込めないと、コストだけ高い状態になってしまうので、事業を継続できなくなるリスクがつきまといます。
しかも、昨今の食材費やガソリン代の高騰のように、社会情勢の変化によりランニングコストが上がってしまうといった事態になれば、売上が変わらなくても所得が減ってしまう可能性もあります。対して、PC1台あれば自宅で仕事ができるようなクリエイティブ職であれば、イニシャルコストは抑えられますし、ランニングコストは光熱費など最低限の額だけで済みますので、個人事業主になってもそこまでリスクは高くなく、開業しやすいと考えられます」(同)
昨年10月にインボイス制度が始まったことも考慮すべきだ。
「インボイス制度開始後は、売上1000万円以上の課税事業者が消費税の仕入れ税額控除を受けるために、適格請求書(インボイス)を発行し、売り手と買い手で保存しなければいけません。対して、売上1000万円以下の事業者は、課税事業者になって消費税を納付するか、免税事業者として消費税の納税義務が発生しないか選択することができます。免税事業者を選択することができるものの、そうなるとインボイスを発行できなくなるので、大手企業などのクライアントからの発注がなくなるといった取引減少が懸念されます」(同)
つまり、年収1000万円以下の個人事業主だと、課税事業者となって消費税を負担することを受け入れるか、免税事業者のままでクライアントが減ってしまうリスクを受け入れるか、どちらかを選ばなくてはいけないわけだ。