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ロータリーの夢は破れたが、ニューシルビアは残った
エンジンや足回りのチープさが惜しまれた、斬新なデザイン
ロータリーの夢は破れたが、ニューシルビアは残った
しかし、日産が初のロータリースポーツ発売を目前に控えた1973年10月に勃発した「第四次中東戦争」と、それに伴う「第一次オイルショック」によるガソリン価格の急騰が、ロータリーエンジンの運命を変えました。
排ガス対策の優良児とされていたロータリー、特にマツダのような燃料の一部を用いて排ガス中のHC(炭化水素)とCO(一酸化炭素)を燃焼させるサーマルリアクター方式を排ガス浄化に使ったものが、「大排気量V8エンジンより燃費劣悪」と酷評されたのです。
依然として当時のレシプロエンジンよりパワフルで、排ガス浄化性能も優秀だったとはいえ、ガス食いのロータリーを小型大衆車や実用車向けエンジンになぞ、とても使えない時代の到来で、日産ロータリーとその搭載車も、世に出る直前でお蔵入りになりました。
しかし、トヨタ セリカ(初代・1970年)への対抗上、同クラスのスペシャリティクーペが必要だったことは変わりなく、B210サニーのプラットフォームへバイオレットの足回りを組んだ車体へ、ロータリーの代わりにブルーバードUのL18直4SOHCエンジン搭載を決定。
こうして1975年に日本では「ニューシルビア」、アメリカなど海外では2リッター直4のL20Bを積む「ダットサン200SX」として、2ドアハードトップのファストバッククーペが誕生したのです。
エンジンや足回りのチープさが惜しまれた、斬新なデザイン
「シルビア」の名は、SP311フェアレディ1600のクーペ版として1965年から1968年まで少数生産されたモデルの名を7年ぶりに復活させたものですが、正式には「ニューシルビア」となります。
当時のスカイライン2ドアハードトップなどにも通じる、斜め後方視界に難があろうとデザイン重視だった太いCピラーや、シャープな印象の顔つき、UFOのようだと称された滑らかなアウトライン(輪郭)は、あらたなスペシャリティクーペにふさわしい斬新なものです。
しかし、サニーより一回り大きいボディにトレッドはそのままで、お世辞にもハンドリングは良くなかったと言われ、エンジンに至っては平凡なL型4気筒の実用エンジンですから、ライバル車が搭載するDOHCエンジンのような魅力にも欠けます。
一応は「NAPS」と呼ばれる排ガス規制対応エンジン搭載を売りにしており、途中で排ガス規制強化への対応、1976年には電子制御インジェクション車の追加で型式もS10からS11へと変更されますが、日米ともに販売はパッとしませんでした。
ロータリーエンジンを失い、ターボエンジンの登場にはまだ早かったという不幸な時代に生まれたS10//S11シルビアですが、そのスタイリングを好むユーザーも少なからずいて、現存する稼働車もあるのが救いでしょうか。
なお、念願のターボエンジンは次世代のS110シルビアに搭載され、本来はロータリー搭載車用だったと言われる「ガゼール」という車名も、その代の兄弟車で活かされています。
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
文・MOBY編集部/提供元・MOBY
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