睡眠は「未来のリハーサル」を提供してくれる
そこで今回ミシガン大学の研究者たちは、睡眠中のラットたちの脳活動パターンをこれまでにないほど正確に測定することで、仮説の検証を行いました。
すると睡眠中のラットの脳活動が単に過去の再生や記憶の安定化とは微妙に異なる、余分な脳活動パターンが観測されました。
そして、この余分な発火パターンを調べたところ、過去の記憶に対するチューニングや再調整、つまりある種の改ざんが起きていたことがわかりました。
研究者たちは、この記憶の部分的な再調整(改ざん)を使って、脳が体験した記憶を加工して「未来のリハーサル」あるいは「未来のシミュレーション」を行っていると結論してました。
実際に、ラットをもう一度同じ環境に戻して脳活動を調べると、夢の中で行った「未来のリハーサル」に似た活動パターンを示していることが確認されました。
睡眠中の脳は記憶を安定化させると同時に未来のリハーサルを行い、次回の挑戦でより良い結果を出すために役立っていたのです。
これらの結果は、睡眠は単に記憶の安定化を行うだけでなく、記憶の一部を再調整して起こりそうな未来に備えていることを示しています。
コンピューターのシミュレーションには起こり得る事態を予測して人々をトレーニングする役割があります。
もしかしたら夢は、圧倒的な没入感のある仮想空間で、未来への備えを提供していかもしれません。
元論文
Retuning of hippocampal representations during sleep
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部