火星に透過型電子顕微鏡を持ち込む日

科学者たちはテイラー氷河の下のユニークな環境と生命力に溢れた微生物たちを研究することで、地球についての理解を深められるだけでなく、地球外生命体の探索についての洞察も得られると確信している。

研究チームのメンバーの1人、ジョンズ・ホプキンス大学のケン・リビ氏は「火星探査機が南極に着陸したらどうなるでしょうか? 血の滝が赤くなる原因を特定できるでしょうか?」という興味深い質問を投げかけている。

こうした好奇心から研究者たちは、火星を探索する探査車が使用するのと同様の方法を使用して、血の滝を火星であるかのように想定して分析したのである。

南極の「血の滝」とは? 氷河の下に古代の微生物、火星探査の問題点が浮き彫りに
(画像=透過型電子顕微鏡を使った成分分析 画像は「Frontiers」より、『TOCANA』より引用)

「私たちの研究により、探査車によって行われた分析は惑星表面の環境物質の本当の性質を決定する上で不完全であることが明らかになりました。これは形成される物質がナノサイズで非結晶性である可能性がある火星のような寒い惑星に特に当てはまります」(ケン・リビ氏)

現在の火星探査の技術では残念ながら火星環境の深い理解は得られないということのようだ。

「岩石惑星の表面の性質を真に理解するには透過型電子顕微鏡が必要ですが、火星に透過型電子顕微鏡を設置するのは現時点では不可能です」(ケン・リビ氏)

しかしこうして発見から100年以上謎であった血の滝のメカニズムを解き明かすことで、科学者たちは魅力的な自然の驚異を解明しただけでなく、ほかの惑星をさらに深く探究するための課題を明確にしたことは間違いない。南極という極限環境の研究がほかの惑星の理解にも繋がっているとは興味深い限りである。

参考:「Interesting Engineering」ほか

文=仲田しんじ

提供元・TOCANA

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