「彼は出航を黙認したどころか、ルシタニア号に武器・弾薬を満載させて出航させます。ルシタニア号が無事にイギリスに着けば兵器をイギリスに送ることができる。もし撃沈されればアメリカ市民を殺したという〝戦争口実〞を得られる。どちらに転んでも痛くも痒くもない。〝戦争口実〞を得るために自国民の命を犧牲にしたわけです」(神野さん)

「大統領の思惑は現実のものとなってルシタニア号は撃沈され、多数のアメリカ国民の命は海の藻屑となって消えていきました。ただ、このときは合衆国の介入を恐れたドイツがただちに『無制限潜水艦作戦を中止』したこと、また、ドイツは事前に新聞広告で警告していたことが明らかになったことで輿論はほどなく沈静化します」(同)

この事件を以ってただちに開戦とはならなかったのです。

トランプ事件から学ぶこと

トランプ候補、狙撃の1週間後にバイデン大統領は撤退表明をしました。党から正式に指名を受けた大統領候補が選挙途中で撤退するのは前代未聞です。

ですが、似たような構図は、ウィリアム・タフト大統領の2期目の大統領選でも起きています。しかし、投票間近になって指名を替えるというのは、同じ致命的失態と言えるでしょう。

神野さんは「歴史に大きな〝爪痕〞を遺した人物を調べてみると、『不思議なほど無名だった若いころから多くの命の危険に晒されながら、それをことごとく〝強運〞で切り抜けてきた』経験を持つことが多い」と指摘します。〝神の御加護〞でもあるかのように。

ところが、〝神から授かった使命〞をやり遂げると、たちまち〝御加護〞を失い、些細な不運で呆気なく落命してしまいます。たとえば、坂本龍馬はその生涯にどれだけ暗殺されかけたかしれませんが、そのことごとくを脅威的な強運で回避してきたのに、大政奉還が終わった直後にあっさりと暗殺されてしまいました。

トランプ氏の「狙撃」が未遂に終わったのも彼の強運に拠るところが大ですが、それは、神から何かしらの〝使命〞を負ってこの世に生を享けたことを示唆しているのかもしれません。