イスラエル軍の空爆によるレバノン側の犠牲者数が余りにも多いことに正直言って驚かされた。ただ、明確にしなければならない点は、イスラエル軍の空爆の前にヒズボラ側はロケット弾150発以上をイスラエルに撃ち込んでいるのだ。
しかし、そのほとんどがイスラエル軍が誇る対空防衛システムに撃ち落とされ、爆発したミサイルは限られている。その結果、被害は少なく済んだという事実だ。ヒズボラの攻撃を回避するためにイスラエル国民はシェルターに避難した。イスラエル軍の軍事目的は避難しているユダヤ人を帰還させるために、ヒズボラの軍事拠点を破壊することにあった。
すなわち、発射したミサイルの数や爆発量はヒズボラとイスラエル空軍の間では大きな差はなかったが、結果は、イスラエル側には数人の死傷者が出ただけで、ヒズボラ側には492人以上の犠牲者がでたわけだ。国連側はレバノン側の犠牲者の数の多さにショックを受け、イスラエル側に自制を要求している。
同じパターンがパレスチナ自治ガザでのイスラム過激派テロ組織「ハマス」とイスラエル軍の戦いでもみられる。ハマスは昨年10月7日、イスラエル領に侵入し、1200人のユダヤ人を殺害し、250人余りの住民を人質にした。それが契機となってガザ紛争が始まった。
イスラエル側はハマスの奇襲テロに報復するためにガザを攻撃。ガザ保健局の情報によると、これまで4万人以上のパレスチナ人が犠牲となっている。ハマス側も可能な限りの武器でイスラエル側を攻撃したが、イスラエル側の被害はパレスチナ側と比較できないほど少ない。
レバノンでもガザ区でも同じことが繰り返されているのだ。イスラエル軍はパレスチナ自治区ではハマスを、レバノンではヒズボラを攻撃し、ハマスとヒズボラもイスラエル軍に負けないほどのミサイルをイスラエル領土に打ち込んだが、被害状況では大きな差が出た。戦闘で圧倒的な攻撃力を誇るイスラエル側はそのパワーゆえに国際社会から批判を受けることになる。