重要なのは河野太郎氏という、首相候補に名前の挙がる有力な政治家が、実際にはいかなる「防衛政策」を持っているのかだ。専門家である東野氏の記事と、素人の本稿と、どちらが彼の主張の本質を捉えているだろうか。

実は河野氏は、9月10日刊の『文藝春秋』の総裁選特集で、自身のビジョンを語っている。ファンとの交流が目的のライブ配信と異なり、同誌は、立憲民主党で新代表となった野田佳彦・元首相も「覚悟を持ってインタビューに出る」と述べるほど、日本の政治家が重視する公的な媒体だ。

そこで河野氏は、こう述べている。

日米同盟だけで平和を守ることが難しくなる一方、英、仏、独、伊などの欧州各国が海軍をインド・太平洋地域に派遣しています。中国が軍事拠点を違法に設置している南シナ海を航行したり、横須賀に寄港するなど、アジアに関与する姿勢を示してくれているのです。

今後、日本も尖閣諸島の問題、緊張が高まる台湾海峡問題などで、欧州各国に協力を依頼することがあるでしょう。その時に「アジアが大変だから助けて欲しい。でも他の地域はお任せ」では通りません。日本も応分の役割を果たさねばならなくなる中、世界で何をなすべきか、今回の総裁選の重要な論点であると考えています。

河野太郎「私が麻生派にいることは問題ではない」 『文藝春秋』10月号、115頁 (強調は引用者)

賛否は別にして、これが河野氏の防衛観である。欧州に東アジアで協力を仰ぐ以上、日本の側も「他の地域はお任せ」ではなく、「応分の役割」を果たすべきだと、明快に説いている。NATOの名称云々など争点ではない。

前回(2021年。岸田文雄氏に惜敗)と異なり、河野氏は今回は早々と本命から外れたため、「日米安保かNATOか?」は総裁選の争点にならなかった。しかし、人気取りのための総裁選である以上、発足する新政権は挙党体制を組むだろうから、外相・防衛相を歴任した河野氏が「関係閣僚」に就く可能性は十分ある。