1つは前半部のブオォ〜ンという波動が広がるような音。そしてそのすぐ後に強い振動音が続きます。

いずれも機械の出す音のようにも聞こえ、宇宙船の音と表現されたりもしました。

マリアナ海溝の底に宇宙船が沈んでいて、今も不思議な駆動音を出している、そんな空想も浮かんでしまいます。

とはいえ、常識的に考えれば何らかの海の生物が出している音であるはずです。

しかし、研究者たちは発見から今日に至るまで、この怪音の正体をつかめずにいました。

2016年に一度、シロナガスクジラやザトウクジラの声ではないかとの主張がなされますが、既知のクジラの鳴き声とは一致せず、未解決のまま10年の月日が過ぎています。

そんな中、NOAAの最新研究は、ついに音声の正体を明らかにしたのです。

怪音の正体は「ニタリクジラ」!

NOAAの海洋学研究チームは今回、ビオトワングの正体を明らかにすべく、これまでに録音した膨大な数の音声を調査しました。

NOAAは2005年以来、マリアナ海溝を含む北太平洋エリアで録音調査を続けており、その音声データは全部で20万時間以上に達します。

研究主任のアン・アレン(Ann Allen)氏によると「この音声を一つずつ聴いていたら、すべてを聴き終わるまでに23年近くかかってしまう」という。

そこでチームはGoogleと協力し、AIを使って20万時間以上の音声データを聴かせてトレーニングさせ、機械学習アルゴリズムを用いて不要なノイズを除去。

その状態でビオトワングの音声データと一致するものを探した結果、ニタリクジラ(学名:Balaenoptera brydei)の鳴き声と見事に一致したのです。

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ニタリクジラ/ Credit: en.wikipedia

ただし、世界中の海に分布するニタリクジラのすべてがビオトワングと同じ奇妙な鳴き声を出すわけではありませんでした。

研究者によると、マリアナ諸島の近くで録音された10頭のニタリクジラのうち、9頭の鳴き声だけがビオトワングの音声データと一致したのだといいます。