「やわた」については「こんにちは」の「は」が「わ」と読むようにハ行転呼によって誕生した読みとなります。

福岡県八幡西区及び八幡東区は北九州市となる以前は「八幡市」でこちらは本来「やはたし」と読みますが、「やわた」と「やはた」の読み方が混在していたそうです。これは海外とのやり取りの中で「やはた」が「やわた」と誤解されて広がったことが原因といわれています。

八幡製鐵所(現日本製鐵)の読み方は国内では「やはた」ですが、海外での正式名称は「YAWATA IRON&STEEL」と使い分けがされていたそうです。フランス語だとHは読まず「やーた」になってしまうので「W」にした方が正しく読んでもらえるということもあるようです。

京都府八幡市は昭和29年の町制施行時から「やわた」であり、愛媛県八幡浜市も明治時代に成立したときから「やわたはま」です。

さて、これまで3つの読み方を紹介してきた「八幡」。もうひとつ、「ばはん」という読み方があり、この読みだとまったく意味が変わり「海賊」の意味になります。

かつて日本が朝鮮沖などで行っていた海賊行為を倭寇といいますが、倭寇は八幡宮の幟を立てていたことから「八幡船」と呼ばれており、それが「ばはんせん」と呼ばれていました。江戸期には密輸行為を「八幡(ばはん)」と呼んでいたそうです。神の名が密輸行為の異名となってしまうなんて、なんとも不本意なことですね。。。地名においては八幡を「ばはん」と呼ぶところはないようです。

全国に散らばる「やはた」「やわた」「はちまん」。特定の地方で読みが異なるというわけでもなく、同じ地方でも読み方が異なっている珍しいケースだと思います。

みなさんのお近くの「八幡」は何と読むでしょうか?

編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2024年9月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。