愛知県名古屋市をめぐって、東京や大阪ほどではないが都会なので生活するには困らず、かといってそこまで大都市ではないため一般の会社員でも普通に一軒家と自家用車を保有することができ、トヨタ自動車をはじめとする大企業の存在もあることから経済も活性化していて就職にも困らないため、「住む街」としては最強なのではないかという説が一部ネット上で話題を呼んでいる。名古屋市や住民への取材を交えて追ってみたい。
人口約233万人(8月現在)を擁し全国の市のなかでは横浜市、大阪市に次ぎ3位の規模となっている名古屋市。ちなみに、人口がもっとも多い区である東京世田谷区の人口は約92万人(9月現在)であり、名古屋市のほうが2倍以上多い。
名古屋市の“強さ”を裏付けるデータがある。「令和5年愛知県人口動向調査結果(名古屋市分)『名古屋市の世帯数と人口』」によれば、過去40年、人口は右肩上がりを続けており、1981年には210万人を切っていたが、そこから20万以上増えている。2000~23年の間、「転入者数−転出者数」で算出する社会増減数は2010年を除き前年比増で、直近の2023年は1万434人増となっており、特に「20~24歳」の増加(8786人増)が顕著だ。
名古屋市総務局企画部企画課シティプロモーション推進担当はいう。
「もともと名古屋市は中部圏域の人口のダム機能を担っており、大小の企業が集積していることから就職口も多いため、中部圏域からの人口流入数が多いです。行政支援策として子育て支援にも力を入れており、保育園の待機児童数は11年連続でゼロで、妊娠中の方には緊急時のタクシーチケットを無料でお配りしており、出産するとお子さま用の5万円分のプレゼントを選べるサービスなども提供しています。18歳まで子どもの医療費は入通院ともに無償となっており、市内の全小学校にトワイライトスクールを設置し、放課後に子どもを預けられるようにしています。このほか、学校でのキャリア教育にも力を入れており、全市立中学校、高校、特別支援学校にキャリアナビゲーターを配置して、専門家や企業の方を講師に招くなど、各学校ごとにプログラムを実施しています」
観光に頼る必要がない
名古屋に観光地というイメージは薄い。地元に愛されるプロ野球球団・中日ドラゴンズと本拠地・ナゴヤドーム(「バンテリンドーム ナゴヤ」)、名古屋城、そして味噌カツや「ひつまぶし」といった「なごやめし」のグルメは有名だが、全国的に集客力の高い観光スポットがあるとはいいがたい。
「やはりトヨタ自動車とそのグループ会社、JR東海といった愛知県内に本社を置く大企業、技術力の高い中小企業が多い点が名古屋市の強みだろう。経済活性化を支え、多くの雇用を生み出すため、観光に頼る必要がないともいえる」(名古屋市内の企業に勤務する40代男性)
「確かに名古屋市内には観光スポットはないが、車を1~2時間走らせれば、海にも山にも行け、夏は登山、冬はスキーにも行けるので、レジャーという面でまったく不便は感じない。また、大型のショッピングモールも多く、家族で車で行って、そこですべて買えるのも便利。
ただ、下北沢や原宿、新宿、渋谷、さらには浅草をはじめとする下町など、東京には街歩きをしながら様々な店舗に寄って買い物の楽しめる場所が多く存在するが、名古屋は意外とそういう場所はないかもしれない」(30代男性)
住宅コストはどうなっているのか。不動産・住宅情報サイト「ライフルホームズ」によれば、名古屋市でもっとも人口が多い中区の1DKの家賃相場は7.69万円。東京都世田谷区の「ワンルーム・1K・1DK」は9.81万円、大阪市北区は同9.11万円となっている。
名古屋市出身の30代男性はいう。
「名古屋市だと、一般的なサラリーマンの世帯でも、さすがに中心地は難しいが郊外に戸建て住宅を建てて住むのは普通なので、たとえば子どもがいる世帯向けの賃貸住宅というのは東京や大阪と比べると少ないのではないか。また、中心地を除くとマイカー出勤できる会社も少なくなく、周辺の市に一軒家と車を買うケースも多い」
名古屋在住の40代男性はいう。
「私の同世代の友人で子どもがいる人は全員、持ち家の一軒家で、マイカーも持っている」