その逆も然り。先日、車を買いに行った時の話だ。営業マンは何を聞いても手元のカタログ表の記述を読み上げロボのようであり、「この機能の違いって、具体的に乗り心地にどう違いが生まれるものなのですか?」などデータにできない体感レベルの質問をすると「それは人それぞれですのでお答えできません」と返ってきて残念に感じた。まさにその人それぞれの部分を聞きたかったのに。

その場では車種を絞り込むに留めて、後日試乗に店長さんがついてくれてそこではたくさんの意見を聞くことができ、おかげで迷いなく購入に至った。店長さんは根っから車好きだったので非常に説得力があった。カタログスペックの話はネットで見ればいい。やはり、知りたい肝は「その人の意見」なのだと感じた。

情報より経験値を稼ぎなさい

薄っぺらくなる理由はシンプル、スマホで情報ばかり追いかけて頭でっかちになり、結果として経験値がないのだ。自分が経験していないことに自分の意見を乗せることは不可能である。一見、自分の意見を出しているように見えても、実際には感情的な反射に過ぎず、話に説得力がないのだ。

「東大を出ても平均年収の2倍も変わらない。だから頑張って勉強をしてもコスパが悪い。適当に会社に入って副業で稼ぐ方が効率がいい」たとえばこのような話である。誰がどう聞いても「いや、あなたはまず東大を出てから言いなさい」と感じるだろうし、副業でしっかり稼げる実績を持ってから言うべきだろう。

本人は経験するより検索した情報のおかげで非効率性を回避したように感じているかもしれない。だが、その実、本来色々駆け回って稼げていたであろう経験値を取り逃がし続け、結果薄っぺらい人格を形成しているだけなのである。

世の中に正解はない。ほぼすべての情報は白黒つけられないグレーのグラデーションでしかなく、自分に合うかどうかはやってみないと分からない。他の人も実体験、実績に基づく相手の話を聞きたがっている。だから手元のスマホで経験せず、答えばかり求めるほど薄っぺらい人に近づく。