チャン氏によると、絆が深まるにつれて脳波のシンクロ率が高まる傾向は人と人に見られる現象と同じだといいます。
また別の発見として、相互作用の「撫で」と「見つめ合い」が同時に行われた場合、「撫で」と「見つめ合い」がそれぞれ別個に行われた場合と比べて、脳のシンクロ率が高まっていました。
人と犬との脳活動のシンクロが確認できたのは今回が初めてであり、人と犬が脳波レベルで深い絆を結んでいることを示す結果です。
加えて、この研究は自閉症の新たな治療法を見つける上でも役に立つことがわかりました。
自閉症の犬には「LSD」を投与するとシンクロ率がUP!
自閉症(自閉スペクトラム症:Autism Spectrum Disorder, ASD)は、対人コミュニケーションに強い抵抗感を示す発達障害の一つです。
子供の約20〜50人に1人が自閉症を持つとされ、名前を呼んでも振り向かない、特定の物事に強いこだわりがある、触られるのを嫌がる、視線が合わない、表情が乏しいなどの特徴を示します。
自閉症は人に特有のものと思われがちですが、実は犬の世界にも自閉症はあるのです。
特にこれまでの研究では、脳のニューロン間の結合を維持するタンパク質を作り出す「SHANK3遺伝子」に異常があると、犬が自閉症を示すことがわかっています。
チームは今回、遺伝子編集ツールを用いてSHANK3遺伝子に変異を起こし、自閉症を持った犬を作成しました。
この犬は人との相互作用を経験しても、脳波がまったくシンクロしないことが確かめられています。
先の実験と同様、撫でて見つめ合う交流を5日間つづけても、脳波のシンクロ率は低いままでした。
そこでチームは、自閉症の犬に合成薬物として有名な「LSD(リゼルグ酸ジエチルアミド)」を投与してみることにしました。
LSDは以前、マウスに投与することで社会性を高められることがわかっています。