この討論では討論や演説が苦手とされたハリス氏が予想を上回る善戦を展開したとして、一連の世論調査などでは「ハリス氏の勝利」という評価が60%以上となった。一方、トランプ氏は自分が完全に勝利したと主張する一方、この討論会はABC自体が本来、明白な民主党支持であり、2人の司会者もハリス氏が有利になる方法で討論を進めたとして、「偏向した討論会」と決めつけた。
なお共和党層全体でも従来、民主党支持を明白にしてきたABCの討論会の仕切り方への批判が広がり、「1対1の討論ではなく、3対1の討論だった」とする論評が多くなった。
その背景にはABCテレビの親会社の総合エンターテインメント企業のディズニーがディズニー・ワールドの行事などのあり方をめぐり、リベラル系の志向に走り、保守層からの非難を浴びてきた事実もあった。ABC自体もその政治報道では民主党傾斜を露骨にしてきた。
こうして波乱含みながらも、無事に幕を閉じたこの討論会はその後、単にトランプ陣営に留まらず、司会者の言動への偏向という批判が広まった。たとえば、トランプ氏の発言に対してはミュア氏が途中で4回も「ファクト・チェック(事実点検)」と称して、中断し、「事実と異なるではないか」と問い詰めた。
たとえば、トランプ氏が「オハイオ州の小さな町では集団で収容されたハイチからの不法入国者が地元の住民のペット犬を食べている」と述べたのに対して、司会者のミュア氏は「その町の町長の言明ではそんな事実は報告されていない」と否定した。
一方、ハリス氏も「現時点では全世界のどの戦闘地域にも米軍部隊は駐留していない」と明らかに事実と異なる発言をしたが、司会者側はハリス氏の言葉には一回も留意をつけなかった。それどころかデービス氏はハリス氏への冒頭での「アメリカはいま4年前よりよくなったか」という質問の後、ハリス氏がその問いには答えず、トランプ氏への攻撃に終始することを止めなかった。トランプ氏の発言を途中でさえぎることも目立った。