この「構造改革」が、「人口減少を克服し、日本の地方経済を再活性化するための長期的展望」を示すものであった。

「構造改革」の主内容が「地方創生」

この「構造改革」の主内容が「地方創生」であり、政府の方針に沿うように刊行された増田編(2014)では、日本全国の1800余りの自治体のうち、896の自治体が数十年後には消滅すると名指しで予告された。

それによって、それら自治体を中心にして「地方消滅」をめぐり全国的な論争に火が付き、当初から「地方創生」論は各方面から注目されるようになった注1)。

その後も「地方が消滅するか」をめぐり、久々に地方日本社会論が全国的な話題として論壇を駆け巡った。都道府県でも市町村も内閣府の指導に基づき、独自の「自治体版地方創生」の総合戦略計画づくりを行った。

10年後の特集は不発

しかし2017年になると「消滅と創生」を主題とした議論は散発的になり、それは2024年まで同じような状態で続いてきた、まるで「地方創生」が国策であることすら忘れられてしまった感が深まった。

それは10年後に同じ形式で出された『中央公論』での特集が不発に終わったことからも分かるであろう注2)。

総括としての『地方創生10年の取組と今後の推進方向』

そして事業開始後10年が経過した2024年6月10日に、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局・内閣府地方創生推進事務局『地方創生10年の取組と今後の推進方向』(以下、『総括文書』と略称)が出された。

この10年間の『総括文書』を丁寧に読んでみると、「参考資料」は具体的で充実しているが、本文である『地方創生10年の取組と今後の推進方向』は印刷すればわずか12頁(11270字)しかなく、国策としての「地方創生」10年後の総括としてはかなり不本意な内容であったと評価せざるを得ない。

文章表現に強い違和感

まずはその文章表現に違和感が強い。なぜなら12頁の中に2種類の目立つ言葉が突出していたからである。