すなわち地方の現状認識とともに政策論の意見交換をしたいという願望が生まれ、伝手をたよって面会を申し込んだところ、石破氏が快諾されインタビューが実現した。2017年9月7日の午後に行った1時間にわたる意見交換の簡潔な記録は、濱田康行・金子勇(2017b:94-95)に掲載している。

石破茂氏との写真(2017年9月7日)左から、濱田、石破氏、金子

対話を通して「政策」の要を学ぶ

1時間の意見交換で、石破氏は政策論の原点として、「従来の経験、カン、思い込みではなく、もっと科学的で地元の個性を活かすこと」を強調された。まさしく対話を通して具体化する「政策」づくりの要を学んだ気がした。

印象に残った具体的事例には、北海道ならばまずは新千歳空港の新しい活用として、「JR日航」「JR全日空」としての空港からの「独自路線」を引き、それをJR北海道線に接合するというアイディアである。つまり航空機と鉄道という社会資源が融合した商品開発を示唆された。

第二としては北海道の有力資産である「牧場と観光」の一体化を強調された。

「観光資源の4要素」も示唆的

第三点目には、「地方創生とは国民運動」であるとも述べられ、さらに「春夏秋冬が鮮明であること、酒と食べ物がおいしいこと、自然が美しいこと、歴史・芸能文化・芸術が豊富にあること」を「観光資源の4要素」とまとめられた。

このような政策論に触れ、現状分析を越えて、政策論への手がかりをつかみ、初めての経済社会学的な共著論文(2017b)が完成した。その後はそれぞれが、自己の観点から「地方創生と新しい資本主義」への展望を単著の形で発表した(金子、2023;濱田、2024)。

そしてインタビューから7年が過ぎ、「地方創生」事業開始から10年が経過した。

3. 10年経過した「地方創生」

アベノミクスから始まった

10年前の安倍内閣によるいわゆるアベノミクスは、第一の矢が「金融政策」、第二の矢として柔軟な「財政政策」、そして第三の矢が「構造改革」として構成されていた。