地方創生に関連しては、「地域活性化起業人」という2014年に始まった制度もある。東京の大企業が地方自治体に人を派遣し、現地での起業を進めるというのが眼目になっている。当初は20人だったが、2023年には779人になった。スタートアップを地方でやろうといっても人材不足が悩みの種だから、やや補助金まみれの感はあるが、とりあえずは人の移動促進にはなるだろう。

デジタル化は『総括文書』で繰り返されたが、そのための人材は約半分が東京にいるし、情報通信業界全体の46%は東京にある。そのため「デジタル田園都市国家構想」なども宙に浮いてしまっている。

「ふるさと納税」の位置づけをどうするか

地方創生とは別件だが、達成した金額や件数で圧倒的に目立のが「ふるさと納税」である。

2022年では5184万件で9654億円が動いた。ただし、このような数字はまだ「地方創生」の全面には出てきていない。

おわりに

将来世代のための「発言」

地方創生10年の『総括文書』を受けて、近未来の日本では内政の筆頭課題として「地方創生」がますます重要になると私たちは判断して、初代の担当大臣であった石破茂氏に再びそれを担ってもらいたいと考えた。

我が国の近未来のためには、その他内政外交ともに重要な政策は山積していることは承知している。環境、少子化、高齢化、人口減少、経済発展、世界平和、アジアの緊張緩和などどれも大きな問題であるが、10年間やってきた「地方創生」が「必要である」というような「総括」しか出せなかったことを反省して、政治はまずこれを優先してほしい。

この短い論考は、子どもや孫が生きる日本の未来を考えるとき、現状を正しく認識して分析した結果、国家の政策にたいして「地方創生」優先の側からの意見具申である。

今回の私たちの発言はそのような趣旨として理解していただければ幸いである。

注1)私(金子)もまたそれまでのコミュニティ研究の成果を活かした関連書を上梓した(金子、2016)。また特に「まち、ひと、しごと」のうち、「しごと」に関連する経済社会学的な内容を含めた共著論文を発表した(濱田・金子、2017a;2017b;2021)。