産業界には、必ず、滅び行くものと新たに創造されるものとの二側面があって、両者は、ともに投資対象になり得る。
例えば、生命保険会社は、既契約の集合体という過去の側面と、新契約の創造という未来の側面をもっていて、理論的には両者は截然と分離され得るわけである。故に、生命保険会社の企業価値は、過去分の価値と未来分の価値の合計として測定可能なのだから、理論的は、両者を分離して、投資対象に構成できるのである。さて、日本の業界の現状として、両者がともに投資価値をもつのか、それとも過去の正の価値を未来の負の価値が食い潰しているのかは極めて興味深い論点である。
同様に、理論的には、全ての企業について、過去の価値と未来の価値に分割した分析評価は可能である。生命保険の場合、事業の特殊性からして分析の精度が高くなるのだが、例えば電気事業者についても、現に保有している電源の価値と、未来に向けて建設される電源の価値とは、それなりに高い精度で測定され得るはずである。