ある日突然、呼吸ができなくなったらどうなってしまうのか。あるアメリカ人男性はカプセルのような“鉄の肺”に入り込んですでに65年間になる――。
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“鉄の肺”の中で過ごすことを余儀なくされる
普段はまったく意識することのない呼吸だが、もしも突然に呼吸困難になったらどうなってしまうのだろうか。何の対策も講じなければもちろん、その先には死が待っていることは間違いない。
アメリカ人のポール・アレクサンダー氏は1952年、6歳のときにポリオにかかり、筋肉の制御が失われて首から下が麻痺し、最終的に自力で呼吸できなくなったのだった。
運び込まれた病院では緊急手術が行われてその後、横隔膜を機体的に動かすための“鉄の肺”の中に入って過ごすことを余儀なくされたのである。現在77歳の彼はすでに65年間、“鉄の肺”の中で過ごしている。
きわめて困難な境遇に置かれたアレクサンダー氏だが、常に病人だったわけではない。法曹の道に進んだアレクサンダー氏はロースクールを卒業して見事に弁護士になったのだ。
テキサス州ダラスにある南メソジスト大学で法律の勉強している時に、アレクサンダー氏はクレアという女性と出会いロマンチックな関係となり、最終的に婚約したのである。
しかし残念ながらクレアの母親はその関係を認めず、アレクサンダー氏がクレアの家に電話をかけた時に、彼女の母親が電話に出て結婚を禁じ、アレクサンダー氏にクレアと話すことを禁じたのだった。
アレクサンダー氏は英紙「The Guardian」のインタビューで、この出来事をどのように感じたかを思い出して「それ(その心の傷)から癒えるのに何年もかかりました」と語っている。