低い重力加速度では既存の重力理論が成り立たない
離れた連星のように重力が弱いときでも既存の重力理論が当てはまるのか、それとも修正ニュートン力学(MOND)のほうが正しいのか?
答えを得るため、研究者は欧州宇宙機関の Gaia 宇宙天文台から採取された2万6500ペアの連星の挙動を調査し、互いに及ぼしている重力加速度を算出しました。
すると連星間の距離が2000au(天文単位)以下では既存の重力理論に従った重力加速度であることが判明します。
しかし距離が2000auを超え始めると少しずつ既存の重力理論値との乖離がはじまり、5000auに達すると修正ニュートン力学に従った、より大きな重力加速度になっていることが示されました。
具体的には、重力加速度が0.1ナノメートル毎秒(0.1nm/s)より弱い場合には、ニュートンや一般相対性理論の重力理論で予測されるよりも、重力加速度が30~40%強くなっていました。
研究者はこの結果について「弱い重力加速度の領域ではニュートン力学と一般相対性理論の両方が崩壊していることを示す証拠となる」と述べています。
同様の結果は他の独立した研究でも得られはじめており、暗黒物質に頼った既存の重力理論は近いうちに試練のときを迎えるでしょう。
参考文献
Startling Signs of Gravity’s Laws Breaking Down Detected in Twin Stars
元論文
Robust Evidence for the Breakdown of Standard Gravity at Low Acceleration from Statistically Pure Binaries Free of Hidden Companions
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。