■「これもう戦争だろ」と話題
京都と奈良は「日本が誇る古都」…と書くと対等のイメージがあるが、794年の平安京遷都以降、千年以上の長きに渡って(福原京等の例外を除く)京都は日本の中心であり続け、令和の現代でも知名度・人気共に京都が大きくリードしている感は否めない。
それ故に第三者視点では「奈良を歯牙にもかけない京都」「京都を意識している奈良」という図式が成立しているようにすら思えてしまう。そんな2府県が、大阪の駅前で対照的すぎるデザインの看板を掲げている光景を見ると、何やら胸騒ぎがしてこないだろうか…。
前出のツイートは2,000件近くのRTを記録しており、他のツイッターユーザーからは「これもう戦争だろ」「看板は目立ったもん勝ちだから、奈良の方が好きかも」「京都は余裕を感じるけど、奈良は『神社仏閣しか出せるものがないんです!』感がある」「どちらかというと、奈良が大阪に寄せてきたっぽい」「京都は景観条例の関係で、こういうデザインなのかな」などなど、様々な意見が寄せられていた。
また、卑屈な奈良県民botさんの強敵(とも)として名高い京都のインフルエンサー「みえっぱりな京都人bot」さんは、同ツイートに対して「奈良はんはえらい賑やかどすな」と、キレッキレな京都煽りを展開。
![大阪の駅前で京都・奈良がガチ喧嘩、一体なぜ… 市民は「これもう戦争だろ」と驚き](https://cdn.moneytimes.jp/600/400/rrBmkemfcFudkZDDbAwVmIZlohvdfveU/26d08a43-4cdc-4ab2-820e-afb0aeb2fc77.jpg)
卑屈な奈良県民botさんも「京都はんもえらい慎ましやかな広告どすなあ(半ギレ)」と応酬しており、完全にプロレスの様相である。
![大阪の駅前で京都・奈良がガチ喧嘩、一体なぜ… 市民は「これもう戦争だろ」と驚き](https://cdn.moneytimes.jp/600/400/amtYYmlrIoYIEQWNQLuJPhTiLSThLhNI/b4a44f11-0bf8-440a-99dc-21a3f37963f2.jpg)
ちなみに卑屈な奈良県民botさんの「中の人」は2名おり、話題の写真を撮影した「ばっきーぬ」さんは看板を見て、思わず「南北朝の内乱ってまだ続いてたっけ…?」と、乱世の匂いを嗅ぎとったそう。
また「奈良県民にとっての京都」について尋ねたところ、「あくまで個人的にですが、奈良県民の私にとって京都は都も新幹線も観光客も根こそぎ奪ってゆく、目の上のタンコブみたいなものだと勝手に思っております」と闘争心あふれるコメントが返ってきた。
しかし、もう1人の中の人「あをにまる」さんは「逆に京都側からしてみれば、奈良のことなぞ目の上のタンコブどころか完全にアウトオブ眼中で、相手にもしていない気がするのは私だけでしょうか?」と冷静に分析しており、前出の質問は奈良県民にとって「永遠の命題」なのかもしれない。
件のツイートを見て、それぞれの博物館の展示に興味を覚えた人もいるかと思うが、写真に収められているのは2021年に開催された特別展の広告である。
![大阪の駅前で京都・奈良がガチ喧嘩、一体なぜ… 市民は「これもう戦争だろ」と驚き](https://cdn.moneytimes.jp/600/400/QvxYfNFysrvIJrrsvyMgPOUcNceAfbjr/42fcfba4-24fd-4c3d-a2ff-1296d1ac8f6b.jpg)
そこで今回は、既存の「奈良のイメージ」を良い意味でぶち壊した広告誕生の経緯について、奈良博に詳しい話を聞いてみることに。その結果、「BreakingDown」も真っ青なバトルの舞台裏が明らかになったのだ…。
■それにしても奈良県、ノリノリである
話題のポップな看板は、21年7月17日から9月12日の間に開催された「奈良博三昧」の広告。
デザイン決定の経緯について触れる前に、奈良博の担当者は「仏教美術を見にこられるのはご年配の方々が中心となっており、以前から若い人たちにも興味を持ってほしい、という思いがございました」「しかし、デザイン性を重視した広告・ポスターにすると『仏様の尊厳を傷つけるのでは…』という意見もあり、毎度こうしたデザイン決定時には決して少なくない制約があったのです」と、同館の抱えていたジレンマについて説明する。
![大阪の駅前で京都・奈良がガチ喧嘩、一体なぜ… 市民は「これもう戦争だろ」と驚き](https://cdn.moneytimes.jp/600/400/rkpwNbIpsgIpkXUNEVjlemaBmfpEMdkn/e44e9232-fac4-4405-8329-47482d8d6544.jpg)
そこで今回もいくつかの案を募ったところ、カラフル且つポップであり、前出の不安にギリギリ抵触しない奇跡的なデザインを発見。担当者曰く「一番ぶっ飛んだデザインでした」という案が、奈良博三昧の広告に採用されたのだ。
![大阪の駅前で京都・奈良がガチ喧嘩、一体なぜ… 市民は「これもう戦争だろ」と驚き](https://cdn.moneytimes.jp/800/533/IJantHYmhuSUQtWPcvcmePwxIYuRtIka/3793b6b3-5a0c-4a0c-8591-1cfd28755498.jpg)
とはいえ、当初は「これはどうかな…」と懐疑的な意見もあったのだが、「このアメコミ風デザインは捨てがたい」「仏像によるアベンジャーズ感を出したい」という思いが伝播していき、晴れて本決定に至ったという。
![大阪の駅前で京都・奈良がガチ喧嘩、一体なぜ… 市民は「これもう戦争だろ」と驚き](https://cdn.moneytimes.jp/600/400/fApoUQkYPelZKiHstdxIwtgFLksdQHSw/701d3bce-dd04-4d91-8a66-a48beeb0c4c1.jpg)
「仏像アベンジャーズ」と聞くと、何やらふざけたイメージ(煩悩)を抱いてしまうものの、ポスターには「56億7千万年後に悟りを開く! 弥勒如来」「燃え盛る炎で煩悩を焼き尽くす! 愛染明王」など、仏たちの特徴を的確に評したキャッチコピーが添えられており、担当者は「インパクトがあるだけでなく、仏教的なPRとしても機能しております」と太鼓判を押す。
それでもやはり「仏教界からクレームが来るのでは…」と心配する関係者もいたそうだが、蓋を開けてみるとこれが大ウケ。担当者は「東大寺の方々も皆さん、大変喜んでくださいました」と振り返っており、改めて日本仏教の柔軟性とノリの良さを実感した思いだ。