併せてアメリカやカナダでは労働者の賃上げ要求が激しくなります。卵が先か、鶏が先かの議論と同じように「物価上昇対策が先か、労働環境改善が先か」よくわからないケースもありました。BtoBの取り引きでは企業は様々な理由のもとサーチャージをつけ、実質値上げ、そしてそれを最終価格に転嫁せざるを得ないところまで追い込みます。この1年以上、テレビでは食品を中心に「今月は〇品目の値上げが予定されています」と報じ続け、それは経済状態の危機感を募らせ、煽ったわけです。ここはマスコミが反省すべき点。

ところが例えばカナダでは物価は明らかに鎮静化しています。原油価格が落ち着いていることからガソリンが1割以上安くなり、スーパーマーケットに並ぶ食品価格も明らかにコロナ前水準に近いものが並びます。また売れない商品の処分セールで5割6割引きが並んでも消費者が飛びつかない構図も見えてきています。これは今までは「焦る必要」があったのに「もう大丈夫」という安ど感が消費活動に出ているといえます。

インフレというのは消費を抑え込む効果もあるのですが、その初期には消費を促進する効果があります。「急がないともっと上がるよ」と。カナダでは8月の消費者物価指数は2.0%上昇、つまり、目標値にたどり着きました。一部報道では次回の政策決定会合では0.50%の利下げもありうるのではないか、とささやかれています。私は0.25%だと思いますが、それでもカナダは病院から退院できる状態であります。

一方、アメリカは集中治療室から一般病棟に戻ったという状態です。今後については感覚的に申し上げれば2025年までかなり頻繁に0.25%刻みの利下げが継続的に行われるとみています。もちろん、諸般の状況次第ではこの平常運転に差し支える事態もあり得るでしょう。大統領選挙の結果と来年1月に就任後にどのような政策を打ち出すか次第で状況は変わります。また2つの戦争の行方も影響するでしょうし、中国経済の行方も気になるところです。よってあくまでもサプライズがないという前提に立つなら少なくとも年内は落ち着きを取り戻し、我々が先々を予見できる状況にある、と言えるかと思います。