「万感の思い」などお前も大げさだな、と言われるかもしれません。そうでしょう、普通の方ならたかが利下げぐらいで、と思うでしょう。しかし、この4年半ぶりの利下げにはコロナという人類史上まれに見る大激動の歴史、そしてポストコロナで想定外の物価高という副作用に対して経済学と人間の英知による処方箋でようやく平静に向けて落ち着きを取り戻しつつあるのです。そして世界で最も影響力あるアメリカが通常の2倍幅で利下げをしたのは極めて意味深いと考えています。そう考えると壮大な話であります。

FOMC FRB FRSのあるエクルズ・ビル 連邦準備制度ビル Wikipediaより

人間の経済行動は基本的に平常時に平常心で判断することを前提にしています。我々が気兼ねなく消費できるのもそれは消費者が期待した通りのものが期待した範囲で入手できるという枠組みの中で行動しているからです。まぁ、一種の期待経済学。だから広告宣伝で「いつものお店がやっていて良かった」といった類のキャッチが多いわけです。この意味合いを理解することこそ重要なのです。

ところが想定外の事態が起きると人間はおおよそパニックに陥り、過剰な行動に走ります。最近では令和のコメ騒動がありましたが、かつては石油ショック、そしてコロナのマスク争奪戦もありました。パニックは必要以上に買いだめをして想定された平常時の需要をはるかに凌駕します。すると供給側サイクルが狂ってしまうことから価格や生産体制、更には人員配置やロジスティックスまで狂うわけです。令和のコメ騒動の場合は比較的軽微でしたが、コロナは全世界でそのサイクルが狂い、人々が家から出られないという究極の体験をしたのです。

その時、人間のエゴや我儘など様々な欲望が渦巻き、法外な価格でも自分の欲望を満足できればそれを得るという常識では考えれらない経済行動すら起きたわけです。これは一部の価格を論外なところまで引き上げました。ところがそれが購入できた人はごく一部でした。99%の庶民はそれぞれの国の政治的判断にゆだねるしかなく、段階的な開放は人々に喜びと同時に通常以上の反動的な消費行動に及んだわけです。