こぼれ話

 「自分が目指している時計は、生きている間に完成しないかもしれないです」。AIコンサルタントであり、iUの客員教授である得上竜一さん。まさか、今回のインタビューが最後に時計の話で終わるとは思ってもみなかった。時計職人を志しておられたとは…。片足を突っ込むどころか、それぞれを職業とするところまで極めようとするのは、知識欲が旺盛という得上さんらしいエピソードなのかもしれない。予想外の話題が出てくるのが、人にフォーカスする『千人回峰』の醍醐味だ。

 小学生の頃、早起きをしてゲームをやっていたという得上さん。ファミリーコンピューターが誕生したのが、1983年。得上さんと同い年だ。後の90年にスーパーファミコンが誕生し、少年時代はまさにファミコンの全盛期。多くの子どもがゲームに熱中していたと記憶している。ところが、得上さんはゲームを楽しむところから、「ゲームをつくりたい!」という方向に興味がいく。そして、実際にプログラミングを読み、頭の中にプログラミングを書き始めるのである。「面白い」「知りたい」という原動力のすさまじさを感じる。何か、置かれた環境を理由にして諦めたことはないだろうか。私にはたくさんある。得上さんの場合、知る方法やできる方法しか考えていないように思われる。できるか、できないかを考えるのではなく、どうしたらできるかな?と考える。そのような思考を作る要素は何なのだろう…。対談を終えてから、わが社の社員のことをイメージしたり、4歳児のわが子をイメージしたりしながら、自分のできることをあれこれ考える日々を送っている。

 家電量販店で価格更新を全自動化する仕組みをつくるようになったのも、iUでビジネスを教えることになったのも、たまたまつながった縁だったそう。得上さんの探求心が磁石のように仕事や人を引き付けているのだろう。きっとこれからも好きを極めて、輪が広がってつながっていくに違いない。どのように時計の道に進んでいくか。これからの歩みにも注目したい。
(奥田芳恵)

AIは「仕事を奪う敵」ではなく、組織の一員と考えるべき――356人目(下)
(画像=『BCN+R』より 引用)

心にく人生の匠たち

 「千人回峰」というタイトルは、比叡山の峰々を千日かけて駆け巡り、悟りを開く天台宗の荒行「千日回峰」から拝借したものです。千人の方々とお会いして、その哲学・行動の深淵に触れたいと願い、この連載を続けています。

 「人ありて我あり」は、私の座右の銘です。人は夢と希望がある限り、前に進むことができると考えています。中学生の頃から私を捕らえて放さないテーマ「人とはなんぞや」を掲げながら「千人回峰」に臨み、千通りの「人とはなんぞや」がみえたとき、「人ありて我あり」の「人」が私のなかでさらに昇華されるのではないか、と考えています。

奥田喜久男(週刊BCN 創刊編集長)

<1000分の第356回(下)>

※編注:文中に登場する企業名は敬称を省略しました。

提供元・BCN+R

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