オーストリアでは29日、ネハンマー現政権の任期満了に基づいて総選挙が行われる。ただ、ここ数日、大雨と洪水に襲われ国内の一部で緊急事態が発生したこともあって、選挙戦は一時休戦となっている。多分、今週後半から再び選挙戦が始まるだろう。被災地を視察しているネハンマー首相は早速、緊急災害援助基金を発表し、被災地の国民に支援を約束していた。

オーストリア国営放送(ORF)は与野党の政治家をスタジオに招いて討論会を開催している。与党「国民党」党首のネハンマー首相と野党の社会民主党のバブラー党首との討論会では双方が相手の発言に対抗し、自分の政策を喋り出す。司会者が次のテーマに移そうにも双方の発言を止めることが出来ない、といったシーンが見られた。多く発言すれば、それだけ選挙では有利となるとでも考えているのかもしれないが、視聴者にとっては煩いだけだ。別の番組にスイッチを変える視聴者も多かっただろう。

政治家は選挙戦期間は普段以上に饒舌となるものだ。実行できるか否かのファクトチェックは後回しとなって、有権者が聞きたい内容をできるだけシンプルに話す。その分野では極右政党「自由党」のキックル党首はずば抜けている。だから、キックル党首が出席する討論会の視聴率はいつも高い。国民は自分が考え、願っていることをズバリ語ってくれる政治家を好むものだ。

大西洋を越えて米国では11月5日、米大統領選挙が行われる。選挙のスーパー年のハイライトだ。民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ前大統領の間で激しい選挙戦が展開中だ。米大統領選は欧州の選挙とは明らかに異なる。国を2分した文字通り民主党と共和党の戦いだ。その戦場では多くの誹謗、中傷が飛び交い、選挙戦が終わり、当選者が決定する頃には戦場には多くの死体が横たわっている。当選した大統領は「私は全ての米国民の大統領になりたい」と宣言して、政敵に和解を呼び掛けるといったパターンだ。なお、トランプ氏は最近、2回目の暗殺未遂事件に遭遇したばかりだ。文字通り、米大統領選はあらゆる次元での戦いが舞台の表と裏で展開しているわけだ。