日本には「猫なで声」という言葉があり、「ネコが媚びるときのように使う声」や「ネコをなつかせるために人間が使う声」という意味があります。

海外にはこういった慣用句はないものの、ネコに話しかけるとき声音が変わるというのは世界的によくあることであるようです。

今回はネコになついてもらうための「猫なで声」に関してパリ・ナンテール大学のシャーロット・ド・ムーゾン氏らが発表した興味深い実験結果をご紹介します。

ネコと人の音声コミュニケーション

ネコに話しかける飼い主
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まずはネコと人の発声を伴うコミュニケーションについておさらいしておきましょう。

本来ネコは成猫になるとあまり発声を伴うコミュニケーションを行わないものです。

子猫のうちは親を呼ぶためよく鳴きますが、大人になると発声によって獲物に居場所がばれてしまうなどのデメリットがあるため、縄張り争いや性的アピールなど特定の用途でしか声でもコミュニケーションをとりません。

ネコが「エサがほしい」「撫でてほしい」といった希望があるとき、人間に対して発声を用いたコミュニケーションを行うのは、実は飼いネコならではの進化を遂げた結果なのです。

ネコの好きな音、嫌いな音

怒っているネコは低い声を出す
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ネコは男性より女性になつくことが多いといったこともよく聞かれますが、実はその根拠は「性別による声の違い」にあります。

一般的にネコにとって低音は「相手を威嚇するときの声」であるため、低音に対しては警戒してしまい、声の低い男性にはなつきにくいのです。

また、ネコは人間やイヌよりもはるかに高音域の音まで聞くことができる動物です。

ネコはネズミや鳥を獲物としますが、それらは非常に鳴き声が高い音であるため、聞き逃さないような耳の構造となっているのでしょう。

ネコは低音から超高音まで幅広い音を聞くことができますが、特に高い音は聞き取りやすくなっています。

人間はネコと接するとき声が高くなる

ネコと触れ合う女性
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上記のような理由から、人間はネコに対して反応が良い高音域の声、つまり「猫なで声」を使うようになったのだと考えられます。

シャーロット・ド・ムーゾン氏らの研究においては、男性と女性に分けてネコに対する発声の音域を調査しましたが、男性の場合はもちろんもともと声が高い女性の場合でも、ネコに話しかけるときは普段の声より高い音域の声を使っていたそうです。

確かに私自身もネコを飼っていますが、ネコと話すときは幼いわが子と話すときよりも声が高くなってしまいます。

このようにおそらく世界中の猫好きが使っているであろう「猫なで声」ですが、実は単に高い声で話せば誰でもネコになついてもらえるかというと決してそうではないようです。